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□ナイトメア
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カツン・・・

その日、訪れたのはごくごく普通の美術館。
絵があって、所々壺などのオブジェがあって。

「キレー・・・」

ごくごく普通に、絵に感動して、美術鑑賞。

していた、はずなのに・・・

スッ

突然、雰囲気が変わった。
部屋が仄暗いのだ。
ブースが変わったのかと思っただけで、彼女はさして気にも留めなかった。
その、展示品を見るまでは。

ずらりとショウケースの中に並ぶのは、料理。

「え・・・?」

最初は、絵なのかとも思った。
とても精巧な。

でも、それは違う事に気が付くと、彼女は今度は首をかしげる。

「何で・・・?」

「いらっしゃい客人。」

ビクッ!

後ろから突如聞こえた声に彼女は恐る恐る振り向く。
そこには、人当たりのよさそうな恰幅の良い男性が。

「ここは私の料理展覧会です。ここに入った客人は、一つ、守っていただかなければならない事があるんですよ。」

そういって、男はにやりと笑う。

「守る・・・?」
「そう、なぁ〜に、難しいことはありません。ただ、一口で良いのです。私の料理を全て食べていただければ。」

まぁ、それなら・・・と、彼女は深く考えずに頷いた。

これが、彼女の悪夢の始まり・・・




「さぁ、ズルをしないように一緒に回りましょう。」

そういって男は、彼女の背を押す。
彼女は、促されるままに足を進めた。

「さぁ、一品目はこの料理。蟹のチャーハンです。」

スプーンですくって、一口。

「美味しい!」
「それは良かった。」

普通の、でもかなり美味しい料理が並ぶ。
彼女は嬉しそうにそれを口に運ぶ。

・・・だが、幸せそうだった彼女の表情に、変化が現れ始める。

「お次はこの料理。カエルの臓物の蒸し物。」

見るからにグロテスクなそれに、彼女の箸は止まる。

「どうしました?さぁ。」
「い・・・イヤ・・・」
「おや、ルール違反ですかな?」
「た・・・食べます!たべ・・・ます・・・」

泣き出しそうなくらい目に涙を溜めて。
彼女は食べなければならなかった。
後ろで包丁を構えている男に殺されないためにも。

その後も彼女の悪夢は続く。

人の目玉のスープ・臓物の煮物・赤子の姿煮・・・

彼女は時に泣き喚き、それでも男は食べずにいる事を許さない。
そうして、彼女はついに壊れる。

「人の舌のあんかけです。」

『食べなくては』

彼女の頭の中はそれだけで埋め尽くされていた。
彼女は考えを摩り替える。

(舌・・・人じゃなくて、牛だと考えれば・・・そうよ、牛タンだと思えば・・・)

パクッ

一口、口に入れる。


「美味しい・・・」

ほぅっと、蕩けるような感嘆の息を吐いて、彼女は呟く。

極度の恐怖で、彼女の味覚が壊れてしまったのか。
それとも・・・壊れたのは彼女の方?

「客人が初めてですよ。最後まで私の愛刀のお世話にならなかったのは。」
「だって、あなたのお料理、とても美味しかったんだものv」

蕩けたように言う彼女の目は、すでに常人のそれではなかった。
彼女は、この悪夢に、取り込まれてしまったのだ・・・

彼女が夢から覚めるのは・・・いつになるのか。

End.




□後書□

後味わるー・・・

えっと、この話は泉が本日(10・2)見た夢です。
いやぁ・・・グロかった。
最後はなぜか仲良く談笑してるんだよ・・・
しかし・・・ほぼ見た通りです。
壊れては居ませんでしたが、舌のあんかけが美味しく感じてしまったのは本当。
夢なのに・・・ねぇ?

最初、これドリーム機能使って『彼女』を呼んでいる人の名前にしようかと思ったのですが、それはそれできついかな・・・と思いまして(苦笑)

楽しんで・・・いただけるか?これ?
まぁ良いや・・・楽しんでいただければ幸いです。

06.10・02



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