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□#1 〜1日目〜
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キーンコーン♪

チャイムの音を聞きながら、私は気持ちを切り替える。
ドアが開いた。

さぁ、仕事の始まりです。


【#1 〜1日目〜】


「今日は皆に転校生を紹介するぞ」

ざわつく教室内。私は伏し目がちに一歩、足を踏み入れた。

「は・・・はじめまして。狩野 ゆき と言います。よろしく・・・」

今回の私は、『人見知りの激しい大人しい子供』だ。
ターゲット以外には声をかけない。

「席は開いているところ、どこでも座って良いから」

そういう担任の言葉に頷いて、私は今日室内を見回す。
出来れば、ターゲットの隣が良い。

・・・いた。

教室の隅、どの席からも離れた場所。そこに今回のターゲットはいた。

カタンッと椅子を引いて、席に座る。

「よろしく・・・えぇっと」
「曾羅・・・曾羅 笑美」

「よろしく、笑美さん」

戸惑いがちに名前を返してきた彼女―笑美に、私は淡く笑んで見せた。

さて、今回笑美がターゲットとして選ばれたわけが、ぼんやりと分かってきた。

本来なら、受付に届くターゲットの名簿は若すぎる物は含まれない。
『生』に疲れ、『死』を選んだ物、人口増加防止の為の高齢者の『寿命』それらが、私達が命を刈る(と言う言い方は悪役みたいであまり好きじゃない)『ターゲット』である。

今回のターゲット、笑美はどうやら手酷い虐めにあっているらしい。

席は周りから隔離され、見た限り、人が近付く気配も無い。
これは・・・確かに『死』へ逃げ込みたいと・・・思うかもしれない。

冷静に私は思う。
だけど、私達に出会ってしまったら・・・絶対に自殺をすることは出来ない。

自殺は自ら命を絶つこと。寿命では・・・無い。
私達は寿命を延ばすか、縮めるか。それを見極めるだけ。

さぁ、仕事の始まり。
笑美と何処まで近づけるか・・・それが鍵となる。

「あの、笑美さん。教科書・・・見せてもらえますか?」


End. 

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