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□#1 〜2日目〜
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私と彼女が隣の席になったのは偶然ではなく必然。
人見知りが激しく、あまり話さない私が、席の離れた彼女と話すのは不自然でしょう?

ねぇ、仲良くしましょ?
私は、私達は。
いわばそう、『試験官』。貴女の寿命を定める者なのだから。


#1 〜2日目〜


一日目で話しかけ続けた甲斐があった。

『教科書を見せてくれませんか?』だの、『お昼一緒に食べませんか?』だの。

次の日、教室のドアを開ければ、そこにはすでに笑美が来ていた。
軽い挨拶を掛ければ、相手も返してくれる。

「おはよう、笑美さん。早いんですね」
「今日は珍しく目が覚めて・・・狩野さんも早いんだね」

「私は道に迷わないようにと言う事で、2時間前に家を出たんですが・・・」

結局迷ってしまいましたと、私は続ける。

ちなみに、これは嘘でもなんでもない。実際に2時間町をさ迷ったのだ。
こちらを見る人の目が冷たいったら・・・

くすっ

小さな、笑い声。
見れば、笑美が手を口元に当てて笑を噛み殺している・・・噛み殺しきれていないが。

「あ、ごめん、つい・・・」

謝る笑美に、私は首を振る。
自分でも、この方向音痴は何とかしたいと思っていたのだから。

「それにしても、笑美さん、笑ったほうが可愛いですよ。まさに『笑美(笑顔が美しい)』って感じがします」
「あ・・・ありがとう狩野さ「ゆき。ゆきと、呼んで下さい、笑美さん」

ちょっと強引かと思ったけど、話を途中で遮った。
名字で呼ばれるのは好きじゃない。
これは偽名。それに、親しい感じがしないから。
笑美は数回躊躇った後で、『ゆきさん』と、呼んだ。

「よろしくお願いします、笑美さん」
「よろしく、ゆきさん。」

私達はまだ私達しか居ない教室で、握手を交わし、友人となった。




皆が登校してくる時間帯になると途端に俯き加減になってしまう笑美に、私は早く来て正解だったと思う。
きっと、休み時間では先ほどのような会話は出来なかっただろうから。


でも、これはちょっと酷いんじゃないかしら。


「佐藤」 「はい」
「清水」 「はい」
「鷲見」 「はい」
「瀬川」 「はい」
「田中」 「はい」


出席を取る先生。
こちらを見ようともせず、笑美の名前を呼びもせず。
・・・まるで、そんな生徒は最初から存在していないとばかりに次の生徒の名を呼んだ。


笑美は、何も言わない。


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