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□偽者。
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ネェ・・・殺したいほど憎んでる人って、居るでしょ?
でもさぁ・・・自分の手は汚したくないじゃん?

だったら・・・頼んでみない?

『きら』に・・・さ。




「おい、睦月妹」
「ん〜?これは珍しい、ハルト君ではないですか。どしたの?」

此処は雪華たちの通う中学校。
時刻は昼休み。

同じクラスの男子、如月 ハルトが、声をかけて来た。

「・・・睦月姉は何処にいる?」
「はれ?キラならさっきまで此処に・・・居ない・・・ねぇ?どこ行ったんだろ?エリーは知ってる?」
『いんや』

胸元に抱えたエリー(今は学校なので10センチほどのミニサイズだ)に尋ねるが、エリーも知らないと首を振った。

「多分お手洗いにでも行ってるんだと思うな。で?ハルト君はキラに何のご用事?」
「いや、お前も込みで、二人に話がある。・・・どーでも良いが、睦月妹。学校にまでその親父兎を持ってくるなよ」

ハァ・・・と、短く溜め息を付いたハルトに、雪華はムゥ・・・と膨れてみせた。

「エリーはわたしのパートナーだもん。いつでも一緒に居るの!それに、エリーは女の子だよ!」
「は・・・?お、んな?メス?嘘だろ?!」

目を見開いて驚くハルトに、雪華はエリーに同意を求める。

「ホントだもん!ね、エリー」
『んだ。オイドンはエリザベッタ・シャルルポワールU世。れっきとした女子(おなご)だ』

パァンッ

『グハッ・・・い・・・きなり何すんだ?!』
「煩い。学校でぺらぺらと話すなとあれほど言っただろう?」

軽い発砲音に、エリーの言葉がつまる。
怒ったように自分を売った主を見れば、冷め切った瞳で自分を見下ろす、キラがそこに居た。

「どこに行ってたんだ?睦月姉」
「あ、キラ!お帰り〜」

「ただいま。なんのようだ?如月」

カタンッと席に着きながら尋ねれば、ハルトはネクタイを緩めながら話し始めた。

「最近、『きら』が、むやみやたらと人を殺している・・・。お前らの、仕業か?」

小さく、周りに聞こえないような音で、告げたその言葉に、二人は顔を見合わせる。

「「いや(ううん)、違う(よ)」」

同時に首を振る。
こういう仕草は本当にそっくりで、あぁ、こいつら本当に双子だな・・・なんて、ぼんやりと思うのだ。

ちなみに、如月ハルト。
唯一二人の裏家業を知る者。
そして、

「で?何か情報はあるの?ハルト君」

二人の専属、情報屋である。

「いや・・・今のところは何も。ただ、依頼人は全員『きらの代理人』と名乗る女子から話を持ちかけられたらしい」
「代理人〜?わたし達は代理なんて雇わないよぉ。正体バレテも困るし」
「大抵はメールのみで依頼人とやり取りするからね。時々電話を使うくらいで、決してターゲット以外には姿をみせないし」
『見られたら速殺、だもな』

その言葉に、ハルトは気付いた。
もしかして・・・

「もしかすると、その犯人はお前ら二人の強烈なファンかもな」
「あ、わたし達に会いたくてって事?」
「もしくは・・・私達の名を下げたい同業者か・・・そのあたりだろうね」

まぁ、ただ、何かの拍子で『きら』の噂を聞きつけた一般人って可能性も有るが。

そう呟いたハルトに頷いて、キラは告げた。

「悪いけど如月。この犯人について詳しく調べ上げておいてくれるか?」
「・・・了解。その代わり・・・高いぜ?」
「えぇ〜・・・いくら位?」
「¥――――」

ボソリと提示した数字に、雪華は不満そうな声を上げる。

「それって高すぎ!もう少し安くならない?」
「無理だ。俺だって命がけで情報仕入れるんだぜ?これくらい貰っても罰はあたらねぇだろ」

「・・・如月の言うとおりだな。分かった、お願いする」
「キラ〜〜〜」
「交渉成立、だな」

雪華の不満を無視して、二人は契約を交わした。

キーンコーン♪

まだ何か言いたそうな雪華を遮るかのように、昼休みの終了を告げる鐘が鳴った。




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