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□偽者。
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放課後、雪華は用事があるから、と、学校に残ったキラを置いて、クラスメイトと帰っていた。

「ねぇ雪。昼休み、如月君と何話してたの?」
「ん?別になんでもないよぉ?キラがお話してたのを横で聞いてただけ」

クラスメイトの言葉に、雪華は首を振る。
嘘は言っていない。
ハルトは事後とをする上で必要な存在ではあるが、仲が良い、と言うほどの馴れ合いもしていない。
必要最低限のことだけを話すようにしている。

「そうなんだ。如月君とキラさんって、仲良いの?」
「ん〜?どうかなぁ?二人とも名字で呼んでるし・・・仲・・・良いのかなぁ?」

ウムム・・・と、首を傾げる雪華に、彼女は笑った。

「まぁ・・・如月君は仕方ないよね。あんたら、同じ名前だし」
「へ?違うよ?わたしは漢字で、キラはカタカナ!」
「発音一緒じゃない・・・なんで双子に同じ名前付けるのよ」

彼女の言葉に首を振って違いを説明する雪華だったが、呆れた物言いで一蹴されてしまった。
何で、と聞かれて、雪華は昔両親から聞いた話を思い出しながら答える。

「えっとね、パパとママが漢字にするかカタカナにするかでケンカしてたんだって。それで、双子なら丁度良いから両方つければ・・・ってことで、同じ発音になったの」
「へ・・・へぇ・・・」

そんなことで喧嘩って・・・双子じゃなかったらどうなったんだろう・・・?

と、心の中で彼女が思っていた事を、雪華は知らない。


「それじゃぁ、わたしの家この先だから」
「あ、うん。それじゃぁまた明日ね、雪」
「うん、バイバ〜イ」

手を振って、笑顔で二人は別れた。


ポテポテポテ・・・

コツコツ・・・

後ろから、付いて歩く音がする。
なんだろう?と、首をかしげていると、胸ポケットに入っていたエリーがそっと耳打ちをする。

『誰か、雪華をつけて歩いてるみたいだ』
「そうだね、エリー。・・・誰かなぁ?」

見当がつかない。
くるりと振り返れば、そこには。

自分よりも年上の、女性が立っていた。

「こんばんは。睦月・・・雪華(せつか)さん?」
「こんばんは。でも、人違いだよ?わたし、『せつか』なんて名前じゃないもん」

にっこりと笑い返して、雪華はそう言うと、再び踵を返して家へと歩き出した。

慌てたのは女性である。
資料と雪華を見比べて、首をかしげている。

「それじゃぁ、あなたのお名前は?」
「わたし?わたしはねぇ・・・『睦月 雪華(きら)』だよ。お姉さんは?」
「キラ・・・?姉のほうか・・・。あたしの名前はきら。同じ名前だね」

知ってるかい?暗殺請負人、『きら』って。

女姓―きらとしておこう―の言葉に、雪華は知った。
彼女が、自分達の偽者であることを。




「雪華!何やってるんだ?こんな狭い所で」
「えっとねぇ・・・何やってるのかなぁ?」

さて、どうしようかと考えを廻らせたところで、良い考えも浮かばず、ここにキラが居たらなぁ・・・なんて、ぼんやりと考えていたら。

本当に、やってきました。
自分の姉が。

「貴方が・・・睦月雪華(せつか)?」
「あ?雪華、誰だい?この人」
「えっとねぇ・・・『きら』さんだって」

「『きら』・・・ねぇ・・・?」

キラは、その言葉に、ニヤリと、笑った。

「私はキラですよ。貴方のその『せつか』って言う読みは間違ってる」
「そうそ、だってわたしたち、二人とも『きら』だもの♪」

「な・・・なんですって?!」

彼女はその台詞にひどく驚いたように二人を見る。
その、表情に満足そうに笑むと、雪華はエリーを。キラは拳銃を構えた。

「暗殺請負人『きら』ってね?一人じゃないのよ♪」
「私達二人で一つ。暗殺請負人なり」

さて、エリー、キラ。

お掃除、始めようか?

雪華のその言葉が、始まりの合図。

依頼外のお仕事の、始まり。

きらを名乗った彼女がどうなったか・・・?
それは・・・知らなくても構わない事なのですよ。

「あ、ハルト君に調べるの必要ないって言わなきゃ」
「そうだな。コトが解決したのに大金を払うのは嫌だからね」

これは、全てを終えてからの言葉。



「何ぃ?!俺の苦労はなんだったんだよ!答えろ!睦月姉!!」

次の日、二人は学校にてハルトの絶叫を聞くことになる。

「そんな事、私に聞かれても困る」


End.







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