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□サンプル。
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【サンタクロースの降る夜。】-サンプル-
12月25日。
鈴の音を鳴らし、空を翔るトナカイのソリ。
サンタクロースがほら、プレゼントをとどけにやってきた。
御伽噺?
いえいえ、サンタクロースだって、本当にいるんですよ?
「っしゃ!今年も張り切ってプレゼントを配りに行くとするか!」
キュッ、と、白い手袋をはめて、赤い帽子、赤い服。
真っ白ヒゲこそなかれど、トナカイのソリに乗り込み、後ろに大きな袋を積んだその姿はまさしくサンタクロース。
何処にあるのは企業秘密なサンタの国から、今、空へとソリを走らせた。
<サンタクロースの降る夜。>
オレはまだまだ見習いだけど、一応サンタクロースの仕事をやっている、三志郎。
この聖なる夜に、子供達にプレゼントを配って回るのが、オレの仕事。
オレは、まだまだ子供で、本当だったらきっと、オレもプレゼントを貰う側なんだろうケド、うん。
仕方ないよな、サンタのじっちゃんはクリスマス前日にぎっくり腰になっちまうし、元々人手も足りねぇし。
それにさ…次の日の朝、枕もとのプレゼントを見て喜んでる子供達の顔を想像したら…それだけで充分すぎるくらい楽しくて、嬉しくて。
オレはこの仕事をイヤだなんて思ってない。
大体、じっちゃんももういい年なんだからさ、毎年ぎっくり腰起こすくらいなら他のサンタクロースに引き継ぎ頼んで自分は部屋の中で指示出すだけにすれば良いのに。
そんなわけで、今年もオレは静かな夜の空を相棒のトナカイ、焔斬と翔けていた。
最近の家に、暖炉はない。
だから、必然的に窓からの侵入になるわけだけど…これ、誰かに見つかったら完全に不審者だよなぁ…
枕元にプレゼントを置いて、寝ている子供に向かってそっと言葉をかけた。
「メリークリスマス」
その言葉に、ゆっくりと口の端を持ち上げて笑みを作る子供。
この瞬間が、一番好きだ。
眠っていても、オレの声が届くのだと、そう感じることが出来る。
入ってきたときと同じように窓から抜け出て、焔斬に乗り、次の家へ。
いつも思うんだけど、鍵の掛かってる窓にオレ達が入れるのって、なんでなんだろう?
サンタクロースだからなんだろうか?
そんなことを頭の隅で考えながらオレの担当の家は全て配り終わって、さぁ、帰ろう。そう思った矢先に。
同じくらいの年の子供を見つけた。
同い年だぞ?(って云っても見た目だけだけど)
ってことは11だぞ?
そんな子供が!どうして!
このクリスマスと言う楽しい日に仏頂面で窓から外を睨みつけてるんだ?
っつーか今夜中の12時!…いや、配り始めたのがその時間だから…1時か?そんなことどうでも良いけど…
子供が起きてる時間じゃないのは確かだよな、うん!
と、まぁ、こんな感じで(どんな感じだって誰かが聞いてたら突っ込まれそうだけど)思わず…声をかけてしまった。
「なぁ、なんでお前そんなにつまらなさそうなんだ?今日はクリスマスだぜ?プレゼントがもらえて、嬉しい日だろ?」
「な…っ」
声をかけてから、子供が驚いたようにこちらを見ているのを見て、やばいって思った。
何でオレはナチュラルに声をかけてしまったんだろう。
サンタクロースは人に見られてはいけない。
それは、夢を護る為だって、じっちゃんが言ってた。
まぁ…なぁ?
プレゼントを配ってるサンタクロースがこんな子供だって知ったらきっと皆がっかりするだろうし…
夢を傷つけたくはなかった。
それなのに…オレは!
どうして子供に声をかけてしまったんだろう?
* * *
声をかけられた子供は、状況が飲み込めずに固まっていた。
何故か。
いきなり見知らぬ人間が声をかけて来たからではない。
2階にある自分の部屋の窓にいるからではない。
声をかけて来た人物が、サンタクロースの格好をして、トナカイのソリに乗っていたからだ。
三志郎が推定したように、この子供の年は11歳。
そして、この子供はサンタクロースも幽霊も、非科学的とされる事は全く信じていない妙に冷めた子供だった。
そんな子供の口から出た言葉は。
「…オイ、何でお前がこんなところにいるんだ?」
三志郎がここにいる理由を問うものだった。
その言葉に、どうやらボーっとしていたらしい三志郎はハッと我に返り言葉を返した。
「何でって…プレゼントを配ってたらお前がそんなつまらなさそうな仏頂面で空を睨んでるから…なんでクリスマスにそんな顔してるんだろうと思って…」
声をかけてしまったんだ、と、しょんぼりと答えた三志郎に、子供は思う。
楽しいわけがない、と。
大切だったアイツを奪っていったこの日が、楽しいはずがない、と。
「今日は俺の親友が事故に遭った日だ。楽しいわけがねぇだろ」
「事故…死んじまったのか?」
「いや、だが…もう2年間も目を覚まさねぇ…ずっと、病院で眠りっぱなしだ…」
そういって、子供は小さく溜め息を落とす。
そんな子供の様子に何か思ったのか、三志郎は暫く何かを考えるような顔をしていたが、唐突に手を打ち合わせると明るく笑って見せた。
「そうだっ!見てろよ?えっと…」
「不壊…だぜ?兄ちゃん」
「そっか、それじゃぁ不壊、オレが今から良い物見せてやるよ!」
データを紛失しました。(アホだろ)
打ち直すのが面倒なのでなくなったら再発行はしません(オイ)
泉的には好きなお話。
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