10/16の日記

23:23
言霊師 (オリジ)
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言葉には、魂が宿るの。

貴方は何気なく口にしたつもりの言葉でも、一度口から出てしまえば、それをしまう事は出来ない。

その言葉は、鋭いナイフにも、優しい救急箱にもなり得るの。

忘れないでちょうだい。

不用意な言葉は、時に本物のナイフよりも相手を深く抉るのよ。

だから、言葉の使い方を、間違えないで。

貴方の言葉は、他の人よりも、意味を持つのだから。

《言霊師―コトダマシ―》

ワタシは、他人(ひと)と喋るのがあまり得意ではない。
話す、と云う行為はとても恐ろしい。

頭の中で推敲して、添削して、念のためもう一度推敲して。
それから細心の注意を払って話す。

そんな事が日常会話で出来る程、ワタシは頭の回転が良い訳じゃない。

だから、必然的に無口になる。
ワタシとまともに話をしてくれるのは、幼馴染の歩雲だけだ。

「温泉旅行券が福引で当たったんだけど…また何か起こるんじゃないかと思って怖いんだよねぇ」

苦笑いを零しながら話す歩雲は、とんでもない不運体質だ。
町を歩けば水たまりにはまる。
コンビニに入ればコンビニ強盗にあい、もっと酷い時は銀行強盗の人質とかになったりもする。
不運、と云うよりも事件誘引体質なのかもしれない、とワタシはこっそり思っている。

「『大丈夫だよ』歩雲。そう毎回毎回『悪い事なんて起きない』ってば。楽しんでおいでよ」
「んー、琴波にそう言って貰えると、何か大丈夫なような気がする」
「あたりまえじゃない。『絶対』大丈夫だよ」
「ん、じゃあ、お土産楽しみにしててねぃ」
「期待してる」

くすくす、と笑い合う。

チャイムが鳴る。

「あ、そう言えば次の数学、ミニテストするって言ってたっけ?」

教室にいた誰かが、慌てた様な声を上げた。
ワタシはゆっくりと口角を持ち上げて、小さく呟いた。

「『大丈夫』」
「?琴波、何か言った?」
「んーん、何でもない」


その日の数学のテストは、クラス全員が学年の平均点以上だったとか。



幼い頃、母に言い聞かせられた。
言葉には、魂が宿る。
不用意な言葉は、ナイフよりも相手をえぐる。

どうやら、ワタシの言葉は他の人のそれより威力が強いらしい。

だから、ワタシはあまり話さない。
うっかり不用意な言葉を口にしてしまわないように。

そして、肯定的な言葉を積極的に吐き出すのだ。

『ぜったい、大丈夫。』
『出来るよ』
『頑張ろう』

ワタシの言葉が、少しでも誰かの役に立ちます様に。

End.

琴波:主人公。♀・高2・言霊使い。
歩雲:主人公の友人。♀・高2・不運体質。

琴波はコトハ→言の葉から。
歩雲は実はフウンと読みます。不運の当て字。

何となくこんな設定の話しが書きたかっただけ。ぐっだぐだです(笑)

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