06/21の日記

23:40
私の話を聞いてください。 (オリジ)
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「私の話を聞いてください」

唐突な言葉に目を丸くした彼は、それでも「自分で良いなら」と頷いてくれました。
だから、私はゆっくりと口を開きます。
突然吐き出した言葉が、彼の作りあげた『受け入れる空気』を壊してしまわない様に、慎重に。

空気を極力揺らさないように気をつけて、「有難うございます」と微笑みました。
我ながらよい出来です。今ならロウソクの火だって揺らがないでしょう。

さて、私の話はこれからです。

どうか、最後までお付き合いいただけましたら幸いな限りでございます。


――その日、けたたましく鳴り響く電話は、私達に衝撃を運んできました。

「七つの、バラバラ死体?」

そう呟いた時の私の表情は、面白い位に間の抜けたものだったそうです。
だって、仕方がないではないですか。私たちの管轄は、私と後輩のアン――本名を、アプリコット・レイチェスと言います――しかいない様な、小さな町で、普段は平和そのものなんですよ?いきなりバラバラ死体が出たなんて言われても、吃驚するよりも先に聞き慣れ無さ過ぎてポカンとしてしまうに決まっているとは思いませんか?
そのあと、様々な言葉を運ぶ電話に耳を傾けながら、お気に入りの万年筆でメモを取り終えた私は、向かいの席で紅茶を注いでいるアンにこう告げました。

「カタバ通りのアパートでバラバラ死体が見つかったそうです。行きますよ?アン」
「し、死体ですか?!あの、えっと、あ、そうだ!紅茶!紅茶飲み終わってからでも…」
「良い訳が無いでしょう?」
「ですよね……」

アンは、仕事が嫌いと言う訳ではありません。むしろ勤勉な方だと言ってもよいのですが、如何せん怖がりなもので、死体をみるのがとても苦手なのです。この管轄に配置されたのも出来るだけ死体を見なくて良い所をと希望を出したかららしいですし。

「まずは死体が見つかったアパートに話しを聞きに行きましょう。…アン、心配しなくても死体はもう運ばれた後ですよ?」
「へ?」
「管轄が私たちの所なので調べる様に連絡が来ましたが、検死なんかは本庁の仕事です。私たちは関係者から話を聞いて、一日でも早い犯人確保に尽力するだけです」

私の言葉を聞いたアンは、分かりやすく喜色を灯しました。スーツの上着を勢いよく羽織って、まるで散歩を喜ぶ犬のように私を急かします。

「レニー先輩!急ぎましょう!」

そんな彼女に苦く笑いながら、私もスーツを羽織って、私たちは現場へ向かいました。



辿りついたアパートは、腰の曲がったご老人が管理人を務めていました。
どうやらご老人は耳が遠い様で、私たちの聞き取りは難航。何度も大きな声でたずね、それでも返答は要領を得ず、アンが歯がゆさに地団太を踏み始めた頃、漸く同じアパートの二階に住む女性が怪しいと云う話を聞き出しましたので、お礼を告げて私たちはアパートの二階へと向かいました。

「お話を聞かせていただけますか?」

尋ねたアンに、女性は「ワタシ、疑われているのね」と全てを諦めた様な瞳で呟いていました。
私には、その女性が犯人の様には思えなかったのですが、どんな小さな事柄でも真実が紛れているかもしれませんので、何か気になる事があれば教えて欲しいと云う旨と、出来れば部屋を見せていただきたいとお伝えしたところ、彼女は長方形の薄い段ボール箱を持って来て、「持っておいた方が良いです」と手渡してきました。

「チェーンソー…?」

何故か、その箱の中身はチェーンソーだと確信した私たちは、顔を見合わせてしまいます。
こんなもの、一体何に…まさか、遺体を切断した凶器だとでも言うのでしょうか。

取敢えずチェーンソーはアンに預けて、私たちは彼女の部屋に上がらせていただける事になりました。

客室に通された私達に、彼女は一冊の写真集のような物を差し出します。

「…っ?!」

小さく震えて、悲鳴さえ漏らせずに私にしがみついてきたアンをなだめながら、私はその写真集をまじまじと見つめました。
写真に映るのは、凄惨な死体の数々。

「真実を見て欲しいの」

そう告げる彼女に首を傾げながらも、じっくりと写真を見ていた私は、気付いてしまいました。
これは、此処に映る凄惨な死体は、全て精巧に作られた人形、紛い物ではないか、と。

「…せんぱ…?」

不安げに私を呼ぶアンに、「これは死体ではありませんよ、」と告げようとして、私は。

「―――――――っっっ」

気付いて、しまったのです。
全身にザワリと鳥肌が立ちました。

凄惨な死体のその奥、背景に溶け込んだ、花が開いた様な形の、花の活けられていない花瓶。

それが、全て人の『手』で作られている、と言う事に。


―――此処で、目が覚めました。そう告げると、彼は呆れた様な声でこう言いました。

「夢落ちか」

と。

私の話は此処でお終いです。不可思議な現象も何もかも、夢だからの一言で済ませてしまったって構わないのですけれども、それでも。

アンが私にしがみついてくる感覚も、全身が総毛だったあの感覚も、確かに覚えているのですから、誰かに話してみたい、と思うのは…仕方がない事だとは思いませんか?

ふふふ、それでは、最後までお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。

End.




はい、と言う訳で夢の話でした。

最近の夢はダーク系です…謎。
いつぞやは何処の少女漫画やねん的な夢を良く見たんですけどねえ…それはそれで謎なんですが。

しかし海外物が多いな(笑)

ちなみにどうでもいいキャラ設定は此方。↓

アン【アプリコット・レイチェス】
25歳。
入社二年目。業務にようやく慣れて来た。
出るとこ出て締まるとこ締まったナイスバディ(笑)手足も長く、タイトスカートから覗く足はエロティック(レニー談)
身長176センチヒールの高い靴を履いているので+10センチ位。
亜麻色のゆるふわロング。瞳はアプリコットティー。極怖がり。

「レニーせんぱぁい…」
「おっはよーございまぁす!」
「先輩…発言がオヤジ臭いです」

レニー【レイニー・オリビア】
30歳。
入社九年目。他の管轄にいる同僚にも頼られる事が多い。
恐ろしく童顔。20代…下手すると10代に見られる事もある。
本人はあまり気にしていないが、犯人に「こんな子供が…」とか馬鹿にされると静かに切れる。
スーツはパンツスタイル。年に一度買いかえるのでいつ見ても新人っぽい。
身長は150センチ。ヒールは履かない派。
やや薄めの紅茶色のセミロングを右側で纏めている。瞳はアイスブルー。

「アンは怖がりだなぁ」
「おはようございます」
「良いねぇアン。今日もエロティックだねぇ」
「ロゼブーケ警察、捜査班長のレイニー・オリビアです。(にっこり)これでも、30超えたおばさんなんですよ?」

*役職はテキトウ。
*夢のイメージがイギリスとかフランスっぽかったので、イギリスとかフランス→薔薇のイメージ→ローズ→ロゼ…→薔薇の花束→ブーケ→ロゼブーケ。
安直極まりない。
ついでに通りの名前は花束→花(か)束(たば)→カタバ。

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