sh'novel
□Present
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「もう冬だね。」
吐息が白く染まる頃。
悴んだ両手を祈る様に擦りながら、僕の隣、君は言った。
「今年も来てくれるかな?」
相槌を打ち、其の手を取って繋ぐと、君は小さく笑んでからそう続けた。
何が?僕が問うと、
「サンタクロース!」
其れは楽しそうに君は答えた。
其れは楽しそうに…。
「…。」
君の居ないクリスマス。
君が見たいと言っていた都内で一番のクリスマスツリー。
腕時計の針は十二を指して、聖なる夜は終わろうとしている。
…ねえ。
ふと頬に冷たさを感じたから、暗い夜空を見上げて、降り始めた雪の中、僕は人知れず涙を流す。
周りに人が居ない訳ではないし、こんな夜に、こんな所で。
大の男が一人で泣くなんて、余りに格好が悪いとは思う。
…けれど、何故かな。
次から次へと零れる涙。
途切れる事なく伝う涙。
堰を切った様に溢れ出す其れを、僕はどうしても止める気にはなれない。
もう気付かれているかもしれない。
誰かの囁く声が聞こえる。
クリスマスの夜。
待ち合わせるのに調度良い、大きくて煌びやかなツリーの前。
一人、立ち尽くし泣く男は、さぞかし哀れで滑稽だろう。
間違ってはいない。
確かに僕は哀れな男だ。