第弐話
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 使い慣れた台所でお茶を用意する手元が、いつもよりも軽やかに動く。

 彼に飲んでもらえると思うと、それだけでこんな動作の一つでさえ浮かれてしまうのだ。



 雛菊は、先程自分に向けられていた爽やかな笑顔を思い返してはにやける口元を抑えつつ……

 淹れたての茶を盆に載せて、食客部屋へと歩きだした。






 第弐話
 二人の運命が変わる時







 食客部屋の襖の前に立つと、男達の他愛ない会話が漏れ聞こえてくる。

 それはいつも通りのことだけれど、


――この向こうに、あの人がいる……


 それを意識した途端、雛菊はフッと自分の身なりが気に掛かった。

 相手だって年頃の男子、女性の見なりに無頓着ということもないだろう。

 大して変わる訳ではないとは分かっている……

 でも、彼の前に立つならば少しでも整った身なりでいたい。

 淡い乙女心を舞い上がらせて、雛菊が自慢の黒髪を手櫛を挿し入れた、その時だった……


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