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御話弐
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雨の中をしずしずと歩いてきた。
不思議なことに、着物に湿り気は感じない。
気がついたら薄紅色の濃い霧のようなものに包まれて、一寸先さえも判断出来なくなっていた。
無意識に、銀の着物に触れていた指先に力が篭る……
「僕にしっかり掴まっとき」
彼がそう言ったかと思うと、フワッと身体が抱き上げられたのを感じた。
次の瞬間……
その奇妙な空間を重力に逆らって移動する様な、何とも不思議な感覚に襲われる。
怖くて目が開けられない……
成る程、これでは確かに人間界のあらゆる交通機関でも、小春の力だけでは行き来できないはずだ。
狐都へ着くまでの間、小春はキュッと目を瞑って銀にしがみついていることしか出来なかった。
御話弍
花嫁の初仕事