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御話四
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その日は、目が覚めてからもずっと夢のことが頭を離れなかった。
それは、明らかになった少年の名前が今、目の前で朝食を口に運んでいる男と同じ名前だからだろうか……?
いや、それだけではない。
あの夢には何か、特別な意味があるような気がする……
「……なぁ小春、食わんの?」
「え?」
銀に言われて漸く我に返った小春は、自分が考え事に熱中するあまり、朝食の途中で手を止めていたことに気がついた。
手元を見ると……せっかく用意してもらった食事は、殆ど手がつけられていない状態で冷め始めてしまっている。
「どこか具合でも悪いのかしら?」
雪月花にまで心配されると、小春は何だか申し訳なくて……
慌てて茶碗を持ち直すと、
「いっいえ……っ
別に大したことじゃないんです、ちょっと変な夢を見ただけですから……」
と努めて明るく微笑んだ。
すると、すぐ横で銀が「夢……?」と不思議そうに首を傾げるので……
小春は頷き、本当に軽い気持ちであの夢の内容に触れたのだった。