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御話六
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二人が初恋を実らせ、幸せな気持ちで眠りについたその夜……
月明かりが微かに照らす伏見の屋敷を、小さな足音だけ響かせて駆け抜ける狐の青年の影があった。
その狐は、長い廊下を走りきった先のある部屋の前で片膝をつくと、「失礼いたします」と中に呼びかける。
「笠間の社のお世継ぎ、先刻ご誕生との知らせが入りました」
その報告に、ロウソクの柔らかな炎に照らされた影が二つ、ハッとして振り返えった。
蛍泉水と雪月花……
誰もが寝静まった深夜にも関わらず、寝間着も纏わぬまま起きていた二人はホッと胸を撫で下ろして顔を綻ばせる。
しかし……
「そうか。それで、子供の性別は?」
その質問が、その笑顔を消し去ることになるなんて、誰が思っただろう。
「誕生したのは男子、それも双子のようです」
「ふ、双子だって……!?」
本来なら、それもまた喜びの一つになりそうな情報なのに、二人は目を見合わせて凍り付く。
双子の誕生……
一体そこに、何があるというのだろうか……?
御話六
新しい命