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御話七
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「あれ、灯は?
アイツ何やってんのぉ?」
合流した火守の後ろを覗いて、ユメはむぅっと頬を膨らませる。
すると、火守が口を開く前に、廊下を鈍い振動が賑わした。
「悪い悪い、遅くなった!」
品が良いとは言えない足音を引き連れて登場した灯は、余程急いだのか軽く息を切らしている。
「そんなに急がなくても良かったのに」
苦笑する小春に、灯は戯けて言った。
「何言ってんだよ小春〜。
せっかく銀公認で小春の傍にいられるんだからさ!
少しでも長く一緒にいないと勿体ないじゃんっ」
それは、いつもの軽い調子のはずなのに、どうしてだろう……?
どことなく、表情が硬い気がする。
しかしそんな小春の疑問も、ユメの弾けるような笑い声によってかき消されていくのだった。
「うっひゃぁ〜!!
気持ち悪いぞ灯〜、小春と一緒だからってそんなに興奮して〜♪」
「馬鹿野郎ユメ!
年上のイケメンお兄さんにそんなこと言うもんじゃなぁ〜い!!」
そんな風にはしゃぎながら歩いて……
一同が進む廊下の先に見えてきた中庭。
それは、四方を廊下に囲まれた小さなスペースではあったが、美しくあしらわれた植木が気取らず、品の良い空間を作り出した落ち着ける場所だった。
御話七
対なる存在