御話八
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「小春……帰るで……」


 漆黒の封筒を握り締めたまま、定まらぬ視線で呟く銀。

 彼は小春の返事を待たぬまま、ヨロヨロと部屋の出口に向って歩き出していった。

 慌ててその後を追いかけた小春に、銀が漏らした意味深な台詞……


「小春……

 帰る前に一カ所だけ寄ってええか?

 今すぐ、確認したいことがあるんや。

 ……気は進まんけど、お前にも会わせておきたい奴が居る」


 薄紅色に染まる視界の中で、小春の胸は騒いだ。






御話八
黒き片割れ





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