□第四話
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箒片手に雛菊が試衛館の中へ戻ると、廊下を何やら話し声が近づいてくる。
「お願いですよ近藤さぁ〜ん……
何とかなりませんかぁ?」
「いやぁ総司、急にそう言われてもナァ……」
雛菊が様子を窺うと、纏わり付く総司を邪険には出来ず、困り果てた様子でこちらに歩いてくる近藤の姿があった。
彼は眉を八の字に傾けると、弟のように可愛がってきた愛弟子を何とか説得しようと試みる。
「分かっているとは思うが、うちの道場は儲かっているとは言えんし……
前借りなんて、とても……」
「そんなぁ……
そこをなんとかっ、お願いしますよぉ〜」
一向に食い下がらない総司に、近藤は更に頭を抱える。
"前借り"という言葉から察するに、内容は恐らく金の無心だろう。
総司は天然理心流の免許を持っているため、今では学ぶ側から教える側となり、近藤から月々幾らかの給金を貰っていた。
しかし、派手に遊ぶ様な趣味もない総司が、近藤に前借りをせがむなんて珍しい話で……
――そういえば、沖田さん……
――この間は結局、飲みに行くの断っちゃったんだっけ
――いつもなら喜んで参加するのに……
他にも、ここ最近の彼には気になる点がいくつかある。
寝坊気味だったはずなのに、起きるのが急に早くなったり……
前より食客部屋でゴロゴロしている姿を見かけなくなったというか、出歩く頻度が高くなった様な気もする。
一体、何かあったというのだろうか……