御話六
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 翌朝、支度を済ませた小春が銀と共に食卓に向かうと、そこに義両親の姿は見当たらなかった。

 二人して首を傾げていると、二人分の朝食を運んできた給仕の女性がその行方を教えてくれる。


「蛍泉水様と雪月花様は、今朝方早くに笠間の一族のお屋敷へと向かわれました。

 実は、昨晩遅く、笠間の一族に待望のお世継ぎがご誕生になったそうでして……

 本日は午後からそちらの祝典も執り行われますので、お二人にもお目覚め次第、向かっていただきたいと言付かっております」


 お世継ぎ……

 その言葉を聞いて、小春の脳裏に浮かび上がるのは、テレビや写真で何度か見た愛くるしい子狐の姿。

 小春の頬が思わず緩めば、銀までつられてへラリと笑う。

 そんな様子を見て、給仕の女性は心苦しそうに「それから……」と付け加えた。


「銀時雨様に、もう一つお伝えせねばならないことがございまして。

 実は、この度の祝典での御祝辞に関して、蛍泉水様は全て銀時雨様にお任せするおつもりだそうで……」


 それを聞いた銀の顔色からは、一瞬で笑顔が消え去っていく。

 彼はどっと溜息をつくと、


「親父め、面倒ごと押しつけおったな……」


 と怒りの形相で掌を握りしめた。


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