11/03の日記

22:07
とある日の会話
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その日は午前授業だけで、午後は教授の私室でのんびりしながらアフタヌーンティーを戴いていた。

教授は私の向かい側のソファーに座って、薬学の専門書を片手にゆったりと紅茶を飲んでいた。



「あの、教授?」

「なんだ。」

「教授は長期休暇に入っても、自宅には戻られないのですか?」

「……なんだいきなり。」


教授は私の質問に対してチラリと視線を向けたかと思うと、すぐに書物の方に視線を戻し、ページを捲りながらあまり興味なさそうな雰囲気で返答をしてきた。


「いえ、ただ気になっただけなので。」

「……その年によってまちまちだ。」

「そうなんですか。」


私はこの雰囲気では話を流されてしまうなと思っていたから、意外にも教授は私の質問に答えてくれて、内心ちょっと驚いた。
でもそれを顔には出さずに普通に返答する。


「……お前は帰らんのか?」

「……へ?」

「その……長期休暇に、だ。」


暫くの沈黙のあと、意外なことに教授がまさかの私へ質問してきた。
私はこの予想外な展開に、思わず変な声を発してしまった。


「え、あ、今年度は今のところは帰る予定はない、です。
……はい。」

「そうか、ならいい。」

「えっ、あ、はい。」


意外すぎる質問にたじろぎながらそう返せば、当の教授は質問してきておきながら素っ気ない反応を返してきたので、私は肩透かしを喰らった気分だった。


「……おい。」

「……はい。」

「次の長期休暇は、……実家に戻れ。」

「……は?」

「お前のことだ、……新学期から一度も帰ってないのだろう?」

「え、あ、まぁ……」

「次の長期休暇ぐらい実家に帰ってゆっくりして来い。
……お前は少々働きすぎだ。」


私は教授の素っ気なさに何だかなぁ……って思っていた。
すると、またもやいきなり教授に話題を振られた私は、どうせ長期休暇は覚悟しておけみたいなことを言われるのだろうと思いつつ、身構えてから返事を返した。

しかし切り出してきた内容はむしろ長期休暇は実家で休めとのこと。

私はまたもや思わず変な声を発してしまったが、教授はそんなことをものともせず話を進めた。

“人のこと言えないくせに”なんて思いつつ、私を気遣ってくれているような口振りにかなり驚愕しつつ、教授の意外な言葉になんだか胸の辺りがくすぐったくて落ち着かなかった。


……まぁ、そう考えながら
『ちょっと得したかも』
……なんて思ってた事は、教授には秘密なんだけどね。



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