06/30の日記

03:31
空と白紙と内側と、
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みんな大好きSNSの小説用お題を使って書きました。何個か書くなら短編のお題コーナーに移動したい一品
お相手セブルス





午前5時32分。机の上のレポートは、いっそ美しいと思えるほど真っ白だった。
「…………もう一度、説明しろ」
「……レポートの提出日が今日だったのすっかり忘れてて、徹夜で仕上げなきゃ間に合わないから慌てて書いてたんですけどうっかり寝ちゃって……自然に起きられたのは良かったんですけど、起きた拍子に腕にインク瓶が当たってひっくり返して、羊皮紙が真っ黒になって……それで、余計なインクだけ消そうと慌てて呪文使ったら、書いた文字まで消えちゃった、みたい、な?」
「………………3日後に再提出。5枚追加だ」
「うぅ…………はい……」
もしかしてセブさんなら白紙と化してしまったレポートを復元させられるんじゃないかと淡い期待を抱いて朝早くから訪ねて来たけど、馬鹿を見る目をされて呆れられただけだった。そして普通に枚数追加された。
さすがに今回は自分でも馬鹿だと思うから反論しないけど、何が悲しくて月曜日の朝からこんな惨めな気持ちにならなきゃならないのか……
「──今から」
悲しみが深すぎてはぁぁぁ……と長めの溜息を吐いていたら、見かねたのか見てられなかったのか、セブさんが口を開いた。
「我輩は薬草を摘みに行く。お前も行くか?」
「行きます!」



爽やかな風。水色の空に淡く輝く太陽。聞こえてくるのは風が葉を揺らす音と、鳥と……なんかよく分からない生物の鳴き声。
「宿題ダメにするのも悪いことばっかりじゃないですね!」
幸せ気分満載で薬草を籠に入れながら本音を口にしたら、期限はしっかり守れと溜息吐かれた。おっしゃる通りなので反論はせず、朝日を浴びるセブさん、なんて貴重極まりないものを心のアルバムに納めるべく、数歩距離をとる。
「何をしている」
「朝から外に出てるセブさんは貴重なので、目に焼き付けてます」
外に出てるセブさんは、24時間365日珍しいんですけどね。
とはさすがに言っていいか分からなかったので思うだけに留め、指で四角なんて作ってみたりして、自作フレームの中に彼を収める。うんうん、真っ黒な姿が朝の爽やかさにこれでもかと馴染まな──……あ。
「セブさん、セブさん」
フレームを作ってた手を離し、空を指さす。あたしの呼びかけに面倒くさそうに地面から顔を上げた彼も、空を見た。
「空の内側には何がいるか、知ってますか?」
「…………頭でも打ったか?」
「そんな心底心配そうに聞かれると心が痛い。どこにもぶつけてませんよ!」
「しかし……」
健常ならそんな事は言い出さないとでも言いたげな顔に苦笑を返し、再び空を見上げる。
「昨日ルーナに聞いたんです。空の内側には……ええと、ヒポポタマス?みたいな名前の魔法生物が泳いでるんだって。空の内側ってどこですかね?」
「内側か外側かなど、どうでもいい。我輩はラブグッドの言葉を鵜呑みにするお前が心配だ」
「えぇ、そこまでですか?」
確かにルーナの発言は9割以上が夢見がちだけど、そんなに心配することだろうか。
抗議したところでルーナの不思議度合いを説明され言い負けるのは目に見えてるので、一応マダムポンフリーに診せてみるかとあたしを担ぎ上げてしまった彼にされるがまま運ばれることにした。
「内側……雲の後ろってことかなぁ……」
「だとしたら見つけるのは不可能に近い。箒でもドラゴンでも、あの高さまで飛ぶのは骨が折れるぞ」
「ふふっ、そうですよねぇ」
全く信じてないくせに律儀に答えてくれるところが面白くて笑ってしまったけど、不快には思われなかったらしい。それに安心して、担がれたおかげで少し近くなった空を見上げる。
少し近くなったくらいじゃどこが内側なのか分からなかったけど、近くても遠くても、今日の空はとーっても綺麗だった。

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