02/13の日記

11:24
【if】ルシウスルート【END】
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※長編260後のルシウスルートENDです。最低でもそこまで読んでからこちらを読むことを強く推奨します!
※小ネタなので名前変換はできません。夢主の名前は【レイナ】です
※読んだ後の苦情は一切受け付けられません
※話のジャンルは多分メリバ

以上が大丈夫な方はお読みください!









 何もかもを棄てて、世界で一番愛しい人と、他の誰より大切な人の願いを、受け入れた。




◆❖◇◆




「マリア、そんなに走ると転けてしまうよ」
「ふふっ。大丈夫よお父様!」

 相変わらず心配性なお父様に笑って返し、緑の上を走り回る。空は青いし草花はいい匂いだし、ハチは少し怖いけど、蝶々は綺麗だし! うん、今日も素敵な一日!

「今日はどこに行くの?」
「そうだね……気の向くまま、かな」
「昨日と一緒ね。うーん……あっち! さ、行きましょうお父様!」
「ああ、行こうか」

 柔らかく笑うお父様の手を引いて。今日こそはと意気込んで、森へと足を向けた。



 あたし達はもうずっと、あてどない旅を続けている。いつからかもどうしてかも分からない。分からないままでかまわない。いつだって、世界一大好きで大切なお父様が傍にいてくれる。それだけで、こんなにも幸せ。

 だからそう。これでいい。毎日綺麗なものだけ見て、美味しいものを食べて、一緒に眠って朝を迎えられる。お父様はいつも笑顔でいてくれる。だから──私はずっと、このままでいい。



◆❖◇◆




「あぁあぁあぁああぁあぁああぁ!!」
「マリア! 落ち着いっ、!」
「違う違うあたしはそんな名前じゃない!」

 血が滲むほど頬に爪を食い込ませ、絶望に瞳を見開き叫ぶ彼女はこの世の何より痛々しい。もうダメかと首をもたげた諦めを心の底へと仕舞い込み、杖を向ける。

「ごめんなさいルシウスさん……あたしはセブさんを、忘れられない……」
「……レイナ」

 悲痛な表情で後悔と懺悔に彩られた涙を流す少女の名を、随分と久しぶりに紡いだ。これほど心を震わせる名を捨てさせ心に蓋をさせることに罪悪感が湧かないはずがない。貴女の想いを尊重するならホグワーツに戻るべきだと理解している。

 ──それでも。

「オブリビエイト。忘れよ」
「るし、う……す…………さ……」
「…………すまない、レイナ」

 なんの追手もかからないということは、あのお方は敗北したのだろう。だが、いまだにセブルスが現れないということは──そういうこと、なのだろう。
 君を生かすのは、私と彼の願い。あいつの最期の願いを果たすのは、私の役目。

「貴女が生きていることだけが、私達の願いなのです」

 涙を拭い、傷を癒し、柔らかな頬を優しく撫でる。私達は君を生かし続けよう。つらい現実から目を逸らさせ、ただ幸せなだけの夢のような世界を与え続けよう。──そのためなら。



◆❖◇◆



「おとーさま、あれは?」
「あれは蝶というんだよ」
「ちょー。きれい! とってきてあげる!」
「マリア、そんなに走ると転けてしまうよ」
「だいじょーぶー!」

 笑いながら蝶を追いかける姿は純粋無垢で愛らしく、見ているだけで癒されてしまう。子供はいつまでも元気だと苦笑して、傍の木に凭れかかり、目を細める。
 あの子はもう、何も思い出さない。自分の本当の名前もセブルスのことも、父親でない私のことも。それでいい。これが私達の願った結末。
 たとえその代償に、自己を失っても。レイナをレイナたらしめる中身が、ひとつ残らず消え失せたとしても。

「おとーさま。ちょー、うごかなくなった」
「おや、壊れてしまったようだね。強い力で掴むとこうなってしまうから、次は気をつけるんだよ」
「はーい!」

 生死も分からない無垢なマリアは、今日も笑って、生きていてくれるのだから。




たった一つの願いの末路



(これでいいと独り言ちた男は、年不相応に無邪気な笑みを浮かべ走り回り蝶を捕まえては殺してしまい首を傾げる女を、ひどく穏やかな表情で見つめていた)

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