06/14の日記

21:50
知らなくて良い話(ルシウス)
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時間軸は、最終章のどこか







「人を殺した事あります?」
 まるで、夕食のメニューを問うような気軽さで。発せられた言葉の意味が分からず固まり、意味を理解して喉の奥から息が漏れた。
「……な、にを、突然」
「うーん、好奇心……とは少し違うかな。知りたいだけです」
 なんのために。出かけた言葉は呑み込んだ。分かりきっている。ダンブルドアを殺したセブルスを。数多を殺した帝王を。我々を。理解するために、彼女は知ろうとしているのだ──そんなことのために。
「ご期待に添えず申し訳ないですが、人を殺したことはありません」
「えっ」
 死喰い人は全員人殺しだと思っていたのか。隠す気もなく驚いた彼女は、そのまま数度瞬きを繰り返し。
「よかった」
 ひどく安心したように、息を吐いた。
「殺さないで済むならそれに越したことはないですもんね。そのままのルシウスさんでいてください。衝動的に死の呪文なんて唱えちゃダメですよ」
「そこまで短気になった覚えは無いですが……どちらにしろ今は杖を奪われているから、呪文は使えないんです」
「あっそうだった!」
 なんの心配もないと笑う彼女に笑みを返す。
 綺麗な貴女に相応しい綺麗な笑みに、騙されてくれたのか騙せたのかは、解らなかった。
 

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