09/25の日記

15:32
夢本1巻のおまけ
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を、サイトにだけ載せちゃう。足を運んでくれたみんなに読んでほしい。
時間軸が間章の中盤以降なので、そこを読んだ後じゃないと話がちょっと分かりづらいかもです。







 息抜きにクィディッチをしようと言い出したのは、息抜きから一番遠いジェームズだった。普段なら言い出さないことを言い出した理由は単純だ。目に見えていた。俺らは当然気付いていたが言わなかった。それが友情だ。
「ジェームズとクィディッチ! いいねやろうやろう! あっ、リリー呼んでくるから待ってて!」
 唯一気付かなかった友人は、ジェームズの何をそんなに見たいのか知らないが、そのジェームズの思惑に当然気付くことなく思惑通りの言葉を残し、満面の笑みで駆けて行った。

「時に止めときゃ良かったんだよ馬鹿かおれはあーおれってほんっと馬鹿!」
「…………あー、降り、」
「るなよ降ろさねェぞ絶対離すな離せば殺す」
「わぁ目が本気」
 必死に睨めば腰に回る腕に力が篭められたことに安堵し、プレイの見やすさを考慮しつつ風向きとブラッジャーに意識を向ける。ぶっちゃけこの俺をもってしてもキャパオーバーだがその程度で音を上げられない上げてる暇があるなら目を凝らせ意識を逸らすな今やらなくていつやるんだ今だろ!
「さすがジェームズ、ずば抜けて上手い」
「グリフィンドールのシーカーだからな」
 当然だと答え、リーマス、ピーター、エバンスの三人を一人で相手取る親友に視線だけを向ける。あいつ一人で事足りるんじゃねえかと何度目かの感想を抱いたが、クィディッチってのはチーム競技だし、なにより。
「ひぇー凄い! ブラッジャーこんっな間近で見られる機会もうないね!」
 手一杯程度を言い訳に、この笑顔を消すわけにはいかねえだろ。

◆❖◇◆

 集まったのは六人。三対三に別れるとジェームズのチームが圧勝だから四対二でいく。そこまでは納得した。問題はそこからだった。
「──待て。お前も飛ぶのか。この風の強い日に、一人でか」
「そりゃ飛ぶよ当然じゃん。というか、風なんて殆ど吹いてないんだけど?」
「いや、上空はそこそこ強い風が吹いてる。そうだリリー怖いなら僕が、」
「結構よ」
「言い切らせてくれない君も素敵だよ!」
 ジェームズの真面目顔見るとハリーを思い出すな、なんてセンチメンタルな気持ちは秒で消えた。いつでもどこでもリリー全肯定マンのブレなさに若干引き、未だにあたしの服の裾を掴んだままのシリウスに目を戻す。
「大丈夫だって。飛ぶの得意だから」
「心配しすぎだよシリウス」
「ぼ、僕も、そう思う」
 親友二人に言われ、どう見ても渋々だけど手を離してくれたシリウスに一安心。まあ飛ぶの得意なんて大嘘で、飛行術は下から数えた方が遥かに早い順位だったんだけどね! との事実は心の中に仕舞い込んで。
「おっさきー!」
 調子良く飛び上がって、上空から皆を見下ろした、僅か数秒後。
「うわ……っ!」
 突風に煽られてバランスを崩した。一秒も置かず体が地面に引っ張られ、強制的に地上へと帰還させられた。
「おれの、しんぞうに、わるい……!」
「……ご、ごめん?」
 ちょっとよろけた程度でひどくないか。言ってやろうと用意していた言葉は、実行犯シリウスの剣幕に押され消えてしまった。怖すぎたからつい謝っちゃったけど……あたしそんなに危なかった? 分からなくてリーマスを見た。困り顔だった。……そうか、五年生になった程度じゃ上達しないのか飛行術…………かなしい。
「ジェームズ、チーム分け直しだ。お前と俺とレイナ。こいつは俺の後ろに乗る。実力的にもそれでちょうどだろ」
「え、僕はリリーと、」
「問題ねえよな?」
「ナイデス」
 あのジェームズに、リリー関連で妥協させられる人間がいるなんて。驚いて、全員揃ってシリウスを見る。
 風力がどうで風向きがこうで二人で飛ぶ場合の安定やらなんやらがどうこう……
 空を見上げて全く理解できない難しい言葉を呟き続ける友人は、誰の視線にも気付いていないようだった。あまりにも真剣なので「あたし地上で見学してようかな」との最適解は、口にするのもはばかられたから飲み込んだ。


「ってことが昨日あったの。今度はセブも一緒にやろうね、クィディッチ」
「……お前、僕が上手く飛べるように見えるのか」
「え、うん」
 見える、というより知ってるんだけど。とは当然言わず、顔を顰めてしまったセブを見る。相変わらず顰められっぱなしの顔を見る感じ、今はまだ得意じゃないのかもしれない。となるとつまり、大人になってから練習した? なんでだろ……万が一クィディッチの審判をやることになった場合に備えて、とか? うーん、そんなに真面目…………だな。依怙贔屓感が凄くて忘れちゃうけど、セブルスさん基本真面目だった。偉い、凄い、さすが!
「というわけで頑張ってねセブ」
「何が『というわけ』なのか理解できないんだが」
「大丈夫だいじょーぶ。華麗に飛び回るセブ、文句なしでさいっこーにかっこいいから」
 他の誰より輝いていると現実を教え、肩を叩く。
「……趣味が悪い」
「そんなことないよ」
 照れてしまった少年に即答して。あの日と同じ青空の下で、セブの隣で、あの人に思いを馳せた。

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