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□絆
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「悟空?」
ひょこっと建物から顔を出した八戒を見て、悟空は慌てて立ち上がる。
「ごめん!もう時間?」
「まだ5分あるから大丈夫ですよ。仕事の前に水分補給が必要ですから」
どうぞ、と差し出されたコップを受け取り、悟空は一口ずつゆっくり飲んだ。
生温い水が喉を通り、乾燥していた体内が潤うのを実感する。
「サンキュ!」
「いいえ。また脱水になっても困りますからね」
砂漠で三人共行き倒れたのは、つい先日の事だ。
「ホント暑ィよな…でも」
悟空は見上げた太陽に笑いかける。
「どんな太陽でも俺は好きなんだ」
そんな悟空を見て、八戒もにっこり笑う。
「大丈夫ですよ、あの人の事ですから」
「そうだよな!」
八戒の意図を汲み取り悟空が元気よく答えると、悟浄が服でバタバタ扇ぎながら建物の陰から現れた。
「ッかー暑ィな。干からびそうだ」
「河童の干物が出来るんじゃねーの?」
「出来て堪るかよ!」
「こんな時まで煙草吸ってたら確実に干物ですよ…はい、どうぞ」
黒い笑みで牽制する八戒に若干引き攣りながらも、悟浄は素直にコップを受け取った。
「残念ながらさっきのでラスト一本。暫く吸えねえな」
畜生、とやけ酒のように水を煽って飲み干した時、ふと赤い箱を思い出した。
「そういやマルボロはあるんじゃねえ?」
「…僕の荷物にあるかもしれませんね」
「そんなの三蔵に…」
怒られるじゃん、と続く筈だった言葉が不自然に途切れた。