93
□絆
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「悟空?」
「おい、どうした?」
急に動きを止めた悟空を心配して八戒と悟浄は声をかけるが、悟空はぼんやり一点を見つめている。
「おい、悟空!」
悟浄が肩を掴んで揺さ振ると、我に返ったように悟空は慌てて言葉を紡ぐ。
「あ、ごめん…」
「どうしました?」
「うん、今、三蔵が…」
その単語に二人が一瞬視線を合わせて、続きの言葉を促した。
「三蔵が『うるせえ』って言ってた…」
「本当か?」
悟浄の確認に、悟空は無言で頷いた。
微かに感じるだけの小さな音だったが、それでも確かに悟空に届いた。
毎日呼び掛けていた声も、確かに三蔵に届いていた。
二人にしか分からない声は、今もしっかり聞こえているんだ。
離れていても、絶対的な繋がりがここにある。
悟空は掌をギュッと握り込んだ。
「三蔵は大丈夫だから俺達も頑張ろうぜ!」
嬉しそうに言う悟空に、八戒と悟浄は同時に頷いた。
傍に居なくて、ごめん。
もう少しだけ待ってて。
今度は俺が、
必ず迎えに行くから。
待ってて――。
2011.4.26
悟空の誕生日からはかなりの遅刻っぷりな上に93と名乗るにはおこがましい程3が出て来ませんが;紛れも無く93です(笑)
繋がりの話を書きたくて、先日再読して再燃したオアシス編のお話を捏造しました。
悟空、お誕生日おめでとう!