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□temptation-another ver.
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「よくお似合いで」
「さんぞ、キレイ」
「やっぱアンタしか着れねえじゃん」
渋々と、それはもう渋々と着替えて部屋に戻ると、三人が目を輝かせて三蔵を眺めた。
「俺の見立てはどうよ」
「少し子供っぽいかなとも思いましたが、三蔵が着ると色気が出ますね」
「そりゃあ謎のセクシー僧侶ですから」
初対面の人間にも分かる程、三蔵は普段から色気を振り撒いてはいるが、素っ気ない法衣と違って浴衣姿の今の三蔵は非常に艶やかだった。
白地に紫と青の花が散りばめられ、帯と下駄の鼻緒も紫で統一してある。
「髪もセットしますから、ここに座って下さい」
抗う気力もなく大人しく椅子に座る三蔵の金糸を梳いて後ろを結わえ、尻尾のような後ろ髪をこれまた紫の花飾りがついたピンで後頭部に留めた。
「簡単ですけど、結わえるだけよりマシですかね」
「三蔵、超可愛い〜」
「アンタ似合い過ぎだろ」
「……………うっせえ」
「さて僕等も支度して行きましょうか」
「何でお前らもよ」
「少し同行させて頂いてもいいじゃないですか。僕も三蔵と歩きたいですし」
「俺も!」
「仕方ねえなあ」
「………それは俺の台詞だ」
三人も借りた浴衣に着替え始めた。
◇◇◇◇◇
「賑やかですねえ」
「すっげー美味そうなモンがいっぱいある!」
「猿、逸れるんじゃねえ」
人通りの波に逆らって進もうとする悟空を、三蔵が引き止めた。
この街の夏祭りは有名らしく、既に日の暮れた時間帯でも色取り取りの浴衣姿の家族連れや恋人達で賑わっていた。
そんな中でもやはり三蔵は目立っている。
ちらちらとした視線を感じながらも、平然としている辺りは普段から慣れきっているようだが。
「何かもう芸能人みてえだな」
「まあ、ある意味かなり有名ですけどね…悟浄」
「ん?」
「僕はもう堪能しましたから、悟空と一回りしてきますね」
「悪ィな」
「その顔は悪いとは思ってませんよ…まあ、ごゆっくり」
珍しく裏のない笑顔を見せた八戒は、タコ焼きの前で三蔵と揉めてた悟空に声をかける。
「悟空、あっちにもお店たくさんありますから行ってみましょうか」
「行く!」
その言葉に悟空は速攻で八戒の手を取り駆け出した。
その姿を苦笑しながら見送り、三蔵の元へと近寄る。
「何喧嘩してたんだよ」
「あいつの食欲にうんざりしてただけだ」
「それ一年中じゃん」
ククッと笑って悟浄は三蔵の手を取って指を絡め、ゆっくり歩き出す。
「三ちゃんは何食いたい?」
「かき氷…若しくはバナナチョコ」
「バナナは止めて。鼻血噴くから」
「馬ァ鹿」
流石エロ河童だな、と三蔵はニヤリと笑った。