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□tea time
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「三蔵、珈琲と紅茶、どちらが良いですか?」

「………紅茶?」

「ええ、紅茶もありますよ」

ニコニコと何が嬉しいのか満面の笑みを浮かべながら、八戒は新聞を読む三蔵に尋ねた。

普段なら選択肢もなく、気付くと珈琲を差し出されているのだが。

今日はどうやら選べるらしい。

「女将さんに美味しい茶葉を頂いたんです。折角ですから紅茶にします?」

「ああ、そうだな」

さして興味もなく再び新聞に視線を落とす三蔵を横目に、八戒は手慣れた様子で紅茶を淹れ始める。

数分後、三蔵の前に出されたティーカップ―――とクッキーの皿。

甘い香りに、三蔵は新聞の陰からテーブルを覗き見た。

「先程クッキーを焼いたんです」

「……洗濯に行ったんじゃなかったのか?」

「女将さんの娘さんが作っていたので、少しだけお手伝いしたんですよ」

これは御礼に頂いたんです、と男にしては細い指でカップを指し示す。

どうぞ、と微笑む八戒に軽く返事をして、三蔵は新聞と眼鏡をテーブルに置いて紅茶を口に含んだ。

「………何だ、これ…」

「ジンジャーティーです」

「生姜?」

「ええ、身体を暖める効果がありますから、冷え症の三蔵には良いかと思いまして」

「変な味だな」

「……まあ、貴方の味覚は独特ですからね…」

苦笑する八戒の言わんとする事を察して三蔵は舌打ちをし、クッキーに手を伸ばした。

一つ口に放り込み、飲み込むと再び手を伸ばす。

存外甘党な三蔵は菓子類を好むのを承知している為、通り掛かりのキッチンについ立ち寄り、手伝いをしてしまった。

こうして見た目では分からなくても、身近に居る者だけが喜んでいる姿を知る事が出来るのは八戒にしても喜ばしい事だった。

「これ簡単で美味しいんですよねえ。もっとバリエーション増やそうかな…可愛い方が人気になるだろうし」

「何の話だ?」

「将来の喫茶店です」

「……まだ言ってんのか」

ボリボリとあまり行儀のよろしくない音を立てながら、三蔵はクッキーを噛み砕く。

「勿論ですよ。四人で喫茶店経営兼家庭菜園は既に決定事項ですから」

「…俺まで巻き込むんじゃねえ。っつーか、これで充分じゃねえか?」

動物や星など様々な形を眺めて三蔵は適当に答える。

味が良ければ形などどうでもいいからだ。

「これは簡単な形抜きですから。ココア生地を重ねてアイスボックスも良いですし、それから…」

「もういい」

既にうんざりとした様子で紅茶を流し込み、袂から愛煙を取り出した。

「俺に語るな。一人で好きにやってろ」

「冷たいですねえ。御礼も無しですか?」

「お前が勝手にやった事だろ」

「全く…じゃあ勝手にしますよ」

テーブル越しに八戒が近付いたかと思うと、ちゅっと口唇に温かい感触。

「あ、美味しい」

「……食えばいいだろ」

「三蔵を?」

「っ…違うっ!クッキーの話だ!」

こんな事で赤くなる顔を誤魔化す為、乱暴に新聞を広げる三蔵を眺めて八戒はクスクスと笑った。

「悟空の分も残しておかないと怒られますから、僕はこれで充分です」

だから、と新聞を手で遮り間近で微笑む。

「おかわり、頂けませんか?」

「………好きにしろよ」

ほんのりと甘い香りが漂う口唇に、再び柔らかい感触が重ねられた。


End
2012.4.13

いつ書いたのか覚えていない位だいぶ前の話ですが、取り敢えず更新します。
全く面白みのない話ですみません…;



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