リクエスト

□temptation
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22222Hit《53/裏》





とある街で行われている夏祭りに有無を言わさずほぼ強制的に参加させられた三蔵は、人混みの中を無言で突き進んで行く。

外見に反して殺気立つ気配に振り返らない者は居ないと思われる位、三蔵はかなり目立っていた。

それもその筈、何しろ女物の浴衣を身に纏っているのだから…。

後ろをついていた悟浄が早足で追い付き、三蔵の左手を掴んだ。

「ねえ、三ちゃん。ンな仏頂面じゃ美人が台なしよ?」

「るせぇ。俺がどんな顔してようが関係ねえだろうが」

「折角のお祭りデートなんだから、機嫌直して」

「じゃあ、こんな格好させんな」

「そりゃあ三ちゃんには華やかな女物のが似合うんだから仕方ないっしょ」

くくっと笑うと、途端に紫暗が嫌そうに睨みつけて来る。

宿屋のサービスで三蔵用に借りた浴衣は、白地に紫と青の花柄をあしらった女物だった。

帯と下駄の鼻緒も紫で、一つに結わえた髪はこれまた紫の花が付いた髪飾りで留めてある。

ちなみに俺は三蔵の浴衣が映えるよう、シンプルに黒の格子柄と白い帯だ。

「……こんなの単なる女装趣味の変態じゃねえか」

「アンタ全然違和感ねーから大丈夫だって」

「……嬉しくねえよ」

現に擦れ違う女性達は、三蔵を見て悔しそうに視線を逸らしている。

そりゃそーだろ。

普段でさえ垂れ流しな色気が、浴衣姿で倍以上になっているんだから。

白い首筋とか、ほっせえ腰とか…堪んねえよな。

無意識に伸ばした手が、三蔵の呼び掛けによって我に返る。

「取り敢えず浴衣の事は忘れてやるから、何か奢れ」

「へいへい、何がいいの?」

「かき氷…それともあれがイイか?」

白い指先が示したのはバナナチョコの店。

「アレ、食ってやろうか」

「……鼻血噴くから勘弁して」

ニヤリと笑う小悪魔は、いつの間にこんなにタチが悪くなったんだろうか。


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