その他
□届け
1ページ/1ページ
海に沈む夕焼けを背にボールを蹴っている人がいた。
その人は、ボクがよく知っている人だった。
「風丸さん」
「あ、宮坂・・?」
やっぱり彼だった。
ボクの片思いの相手、風丸一郎太さん。
前まで同じ学校に通い、同じ陸上部に所属していた人。
・・でも今、風丸さんはボクの傍にいない。
雷門と言う学校に転入し、サッカー部に入ってしまった。
ボクは風丸さんと走るのが凄く凄く大好きで唯一の楽しみだったのに。
「元気にしてましたか?」
「ん?あぁ。宮坂も元気そうだな」
「はい、風丸さんがいなくなって少し寂しいですけど」
"すまない"と眉を下げて笑う風丸さん。
ボクは首を横に振り、微笑んだ。
すると風丸さんもにこっと微笑んでまたボールを蹴り出した。
ボールを蹴る彼も凄く早く、綺麗に風を切っていた。
ボクは軽く手を振り、その場をあとにした。
届け
(また一緒に走りたいです)
.