小説

□アゲハ蝶
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ヒラリヒラリと舞い遊ぶように

姿見せたアゲハ蝶

夏の夜の真ん中 月の下

喜びとしてのイエロー 憂いを帯びたブルーに

世の果てに似ている漆黒の羽




真夜中に天国は目を覚ました。

静かな部屋の中には壁にかけられた時計の秒針が時を刻む音と、広いベッドの中隣で寝息を立てている愛しい人―――――冥の規則正しい寝息だけが響いている。

自分の身体にかけられたシーツを冥にかけ、天国はベッドを降りる。
敷物一つないフローリングは素足には少し冷たい。

だがそれを気にとめる様子もなく、天国は硝子の閉まった窓辺へと近づく。


見上げると、満月には後数日足りないふっくらとした月が、透明な硝子越しに天国に澄んだ光を投げかけている。

金に輝くその光の主は、満ちれば、今もシーツの海で寝息を立てている冥の黄金色の瞳によく似た姿になる。

月に一度だけ見ることのできる天に輝くその真円が、天国は大好きだった。
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