宝物!!

□愛しの屍人間
1ページ/5ページ




「フランケンシュタインの造り方?」


「あぁ…」


 その問い掛けに、天国は驚いたような、困ったような複雑な表情を浮かべた。


 次の瞬間、外から進入していた閃光が、産みの親の顔を一瞬隠す。


 視界が戻ったかと思うと、今度は雷鳴が耳ついた。


「……すっげぇ雨と雷。今日は嵐だな…」


 やけにのんびりとした口調で、天国が言葉を紡ぐ。


「なぁ、冥。そんなこと聞いて、どうするんだよ?」


「知りたいから聞いてんだ。とりあえず、そんな事も分からないのか?」


「お前も大層な口をきくようになったじゃねぇか…バラすぞ?」


 青筋を額に浮かべて、手術用のメスを手に取ってう男の姿に、少なからず悪寒を感じ、


「すみませんでした」


 と、小さな声で謝罪した。


 その言葉に、天国は小さく息を吐き出して、腰掛けていた椅子に深く座り直した。


 そして、亜麻色の大きな瞳で真っ直ぐオレを見つめる。


「どうしたんだよ、突然。フランケンシュタインを造るのか?」


「あぁ」


「兄弟が欲しいとか?」


「とりあえず、違う。オレが造りたいのは、フランケンシュタインの花嫁だ」


「お前の、花嫁?」


 精悍な瞳が憂いを帯び、創造主は淋しそうに告げた。


 笑ってるのに、泣いてるようにも見えるこの表情が、オレは嫌いだ。


 これを見る度に胸がひどく痛んで、泣きたくなる。


 だからその表情を見ていたくなくて、オレは産みの親からすっと視線を外した。


 室内は静寂に包まれ、豪雨が窓を叩く音が響く。


 天国もまたオレから視線を外し、窓越しに外を眺めながら呟くように言った。


「そういえば、お前が産まれた日も、こんな嵐の夜だったな」


 その言葉に、オレが産まれたあの日の事が脳裏に浮かんだ。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ