宝物!!
□水分補給
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うだるような暑さの中で、十二支高校野球部メンバーは、その練習に懸命に励んでいた。
そんな中、練習についていけない部員が約一名。
その者にいつもの元気は無く、虚ろな瞳で白球を捕え、おぼつかない足取りでそれを追い掛ける。
そんな部員の側に、一人の青年が歩み寄る。
「とりあえず、やる気が無いなら、さっさと山に帰れ」
白銀の髪から覗く琥珀色の瞳に部員を映し、犬飼はそう冷たく言い放った。
「うるせぇよ、ボケ犬。オレに話し掛けんな」
力の無い声で返し、猿野は額の汗を拭う。
明らかに疲労仕切っている少年を前に、犬飼が言った。
「辛いなら、休むなりして全快になってから練習に参加しろ。今のお前を見てると、イライラする」
「おやおや、お犬様にしてはお優しいお言葉ですこと。でも生憎、オレに休んでる暇はないんでね」
「とりあえず、無理すると倒れるぞ」
猿野に釘を刺し、犬飼はさっさと練習に戻っていった。
「倒れるわけにはいかねぇよ…」
独り言のように、また、自分に言い聞かせるように猿野が言った。
そして、重たい体を無理やり動かして練習に参加した。
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