しょうせつ
□flower
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「あ、そうだ!!アイリス、レニに渡すものがあって来たんだった!」
「渡すもの…?」
そういえば、先程から両手を後ろにしたままだということにレニは気付いた。
「はい、これ。」
そう言ってレニに差し出したのは
―花飾り―
それは、まだレニが帝劇に来て半年もしなかった―感情というものを失っていた―頃にアイリスが作ってくれたものと同じだった…。
「これ…!」
「今日はレニの結婚式でしょ?だからアイリス、今度は、レニが幸せになりますようにって祈りながら作ったの♪
アイリス、レニに本当に幸せになって…もらいたいから…。だってレニは…、アイリス…の…大切な…一番のお友達……。親友だから…!だ…から…!」
目に涙を溜め話すアイリスを見て、レニは胸が痛んだ…。アイリスの涙の意味が分かったから…。
アイリスもあの人が好きだったから…。アイリスだけではない…、花組全員が…。でも、とりわけ彼女だった…。
だけど、結婚のことを話した時、一番喜んでくれたのもアイリスだった…。
心から。本当にレニの幸せを願っていたから…。彼女にとっても、あの人がどんなに大切か分かっていたから…。
最初は、複雑な気持ちも確かにあった…。何日も部屋から出てこないこともあった。
でも、最後には親友への思いが勝った。
そして今…、こうしてレニの傍に居てくれる…。
一方のレニも、今日が来るまで悩んでいた。
あの人が好きなのはアイリスも同じ…。
けれど、あの人が選んだのは自分だった…。
もちろん嬉しかったが、親友のことが気に掛かったのも確かだった…。
でも…
「お兄ちゃんは……アイリスじゃなく、 レニ のことが一番好きなんだよ?レニもお兄ちゃんのことが好きなんでしょ?
それならいいじゃない!
ほら、笑って!」
そう言ってくれた…。
自分も悩んでいたのに……、そんな風を見せず、心から喜んでくれた…。
「…」
思い出すたびに温かいものが胸に込み上げてくる…。
…と、レニはふと何かを思い出し、バッグの中に大事に入れていたものを取り出し、アイリスの頭に乗せた。