釘L小説

□*約束ゴト
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夜の仕事帰り。

月の光の方向へ歩く彼と俺。


二人の距離は50cm程。
その距離が遠くなることも、近づく事もない。



なぜなら彼は







「………はぁ…。」




怒っているから。





「…………。」



スタスタと歩いていく彼。

でも声を掛けることも出来ず、必死に付いていくしか出来なかった。


下を向きながらコンクリートを見つめていると、彼の影が止まった。


「…一回ここで話そうか。」
「……?」


視線を上げると彼は冷たい顔で隣にあった公園を指差していた。



少しだけ距離を置きながら二人で座ると軽く軋むベンチ。


冷たい風に体が震える。

「でさ。」
「……っ…。」


彼の声にぴくんと反応してしまう。


「何したか…分かってる?」
「……ご…ごめんなさ「そうじゃなくてさ。」

謝ろうとしたら遮られる。
酷く、冷たく。


「何したか分かってんのかって聞いてんの。」
「…うん…。」






昨日。


絶対に呑まないって、
真っ先に彼の家に帰ると約束したのに。




ナカちゃんに誘われて軽く一杯のつもりで行ってしまい。


すぐに酔いが回り、約束なんかすっかり忘れてしまって。

気が付いて、目が覚めた頃には自分の部屋にいて。


仕事場についたらみんな気まずそうにしてて。
ナカちゃんから教えてもらったのは、


『途中で竜太朗が来て、無理矢理お前を連れて帰った。』




スーッと血の気が引いて行くのを感じながらも、記憶を辿れば、

飲み屋で霞んだ視界のなか、竜ちゃんが何かを言っていたくらい。







そして。

「正くん、話あるから。一緒に帰ろうか。」

そんな冷たい言葉に周りが凍りつくなか、
早々と支度をして帰って来ているのが今な訳で。
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