東京喰種 Colos Lie
□5話:白昼夢
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私がとった行動はいたってシンプルだった
近くに止めてあった、バイクの主の許可もままならない状態で、そのバイクを拝借してすぐにエンジンをふかす
「ちょ、ちょっとあんた!」
今時ではありえないようなとんがったモヒカン頭のバイクの主が現れたが、構っている余裕はなかった
「これ、改造バイクですよね?申請だしました?」
案の定、モヒカンの男は、喉を詰まらせる視線を泳がせる
見たところ、マフラーは短く、装飾や座席は変形しており、ミラーなどは見当たらない
私はにっこりと微笑んだ
「回収させていただきます」
マフラーが鼓膜を破らんばかりがなり立てているけど、そんなことに気している場合ではないため、叫ぶモヒカンの彼を無視して、ほぼ盗んだといっていいバイクで走り出した
けたたましい音に耳を塞ぎたくはなるけど、両手を離してしまえば、操作が難しいため我慢するしかない
「そこのタクシー止まりなさい!!!!」
バイクの爆音にも負けないぐらい裂けんばかりに警告をするけど、元々聞く気なんてないのか、もっとスピードをあげていくタクシー
向こうのバックミラーからでもわかるけど、赫眼が車のライトのように見開かれている
ってことは、ムツキ君は既に喰種と・・・・・
嫌な予感が胸に穴を開けたかのように、そこがすーっと冷えていく
嘘だ・・・そんな・・・そんな
お願いお願い・・・お願いします
私の嫌な考えを吹き消すようにして、後ろからがなり立てる聞き覚えのある声が聞こえた
乗っているバイクと比べれば静かすぎる騒音が後ろでがなり立てる
そちらの方に首をひねれば、見慣れた姿が追いつこうともがいていた
「もっと飛ばせ不知!!!」
「道交法違反になるぜ!?」
そんな元気な声が聞こえたかと思えば、私のさらに後ろの方で、ウリエ君とシラズ君が2人乗りで仲良くバイクで走ってきた
「2人とも!」
一応、バイクついでに拝借していたヘルメットを少しだけ上にずらして、2人に自分の存在をアピールしてみれば、それに気づいてくれた
「上城二等・・・(チッ先客がいたか)」
「おい、一体何が起こってんだよ?トオルは無事なのか」
シラズ君が顎でしゃくった先はタクシーの中だ
おそらく、ムツキ君とトルソーをおってきたのだろう
私はわからないという意味も込めて首をふろうとしたけど、それではムツキ君が死んでしまったと言っているで嫌だった
2人を安心させるというよりかは、自分を安心させる意味も込めてここでは力強く頷く
トルソーは大通りにまで出て行くと、対向車にまでぶつかりながらも、なんとか逃げようともがいていた
こちらも跳ね返ってきた車にぶつかりそうで、必死になってよけるものの、このままじゃ、一般市民も危ない・・・・
私はバイクでタクシーの横にぴったりとつく
道路との摩擦で煙が出そうなタクシーのタイヤに向かって、剣の形式のクインケをタイヤに突き刺した
破裂音がし、うまいことタイヤに穴をけることができた
ただ、片方だけだったたため、あまり大幅には移動はできない
空気が抜けたタイヤは大きくスリップするほどではなかったが、カーブしてなんとかこれ以上大通りに行くことは妨げられ、人通りの少ない道へと強制誘導することができた
これでこの先の人気の薄い道路に行けば・・・・
安心したのも束の間
トルソーは鱗赫だったようだ
なぜわかったかというと、運転席のガラスを突き破り、こちらに向かって突き刺そうと伸ばされた赫子がみえたからだ
容赦なく私にむかい、身体の中央を狙って赫子が矢のように鋭い一撃をむけてきた
左ハンドルをきっても、ついてくるそれに、私は観念して、ハンドルを軽く握り直す
私は足をかけていた場所にグッと力をいれて、映画のスタントマンのように、タクシーのいる前に向かって大きくジャンプをした
これで、タクシーにまで届かなかったらただの笑いものだ
「ひぃ・・・・!」
情けない声とは裏腹に、なんとか地面と『こんにちは』を免れるために、バイクと『さようなら』をした
トルソーの赫子が足の下を通過し、ジャンプで足りない距離を、その赫子を利用させてもらい、なんとかクインケをタクシーの天井へと突き刺して、バランスをとることに成功した
ちなみに、トルソーの座っている運転席を狙ったみたいだけど、さすがに走行中のタクシーだったためか、不発だったみたいで、彼の肩口ぐらいしか斬れなかった
でも、そう簡単には治癒されないだろうから、このまま停車させてしまえば
もう一突きほどしようとしたところで、ファンファンと応援のパトカーなのか、後ろからサイレンがなっている
お巡りさんにはウリエ君たちに任せて、ここで止めていかなきゃ
けれど、私がまだタクシーの上で生きているということに気づいたトルソーが、振り落とそうとタクシーが左右に大きくゆらしてきて、クインケを命綱のようにしっかり持つことしかできない状況になった
新感覚のジェットコースターを体験しているようで生きたこことがしない
タクシーの揺れが大きくなり、その原因を探るようにして、横を見ると、パトカーがトルソーのタクシーを減速させようとしているのか、車体をこすらせている
ギョッとして、声を張り上げた
「下がってください・・・・・・!!」
鉄の擦れる嫌な音がしたがそれを止めるためではない
私の声が聞こえていないのか、パトカーが少し離れて横に並び、もう一撃タクシーにぶつかろうと、一旦車両を話したところだった
にゅるりと窓ガラスから伸びてきた赫子は、一旦弓なりにそれたあとに、狙いを定めたように迷うことなくパトカーの助手席と運転席を射抜いた
「っっ・・・・・!?」
男の捕食対象は、トルソーの美学に反しているのか、警察官の首だけをさらったかと思えば、そのまま外へと無造作に投げすてた
後方では、シラズ君の歯ぎしりが聞こえた
血飛沫・・・・舞う首
ムツキ君もまさか・・・
嫌な予感が胸にひしめき合い、違うと否定を求める
誰か死ぬぐらいなら――――
「『私が死ぬのに』」
ぼそりと動かされた唇には全く身に覚えがなかった
しかし、確かに自分の唇が動いたのだ
あれ・・・・今なんて・・・・
もう一度、聞きただそうとしたところで、ぐちゃりと耳ではなく自分の身体の方から、粘土をこねくり合わせたような音がした
クインケを持っていた右手で手探りをして、その正体を探る
お腹がなま・・・あたたカイ・・・
自分の腹にベッタリと汚れた血で、何がおこったのか全て察しがついた