東京喰種 Colos Lie

□番外編:Eat me
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ピンク色のバルーンとリボン

赤色のバルーンとリボンなどの装飾に、ハートを象った模型


近頃、無色だった街の色が暖色などの暖かさを感じる色へと変貌していた

服を通り越して、肌を突き刺すような風も、これらの色を見ているだけで紛れていく


色めきあっているのは、街だけではなく、CCGの職場もだった

女性の職員から男性の職員もどこか忙しなくて、落ち着きがない


そんな雰囲気をひしひしと感じながらも、麗愛は紙袋片手に局へとやってきたが、死守すべく抱きしめ直す

雰囲気を跳ね返すほど凛とした女性を発見した麗愛は、そちらの方に助けを求める走りよる


「アキラさん!!」

「あぁ、麗愛か。どうした?」

「今年もよろしくお願いしますッ!」


麗愛が差し出した淡いピンク色の紙袋

そこに描かれた赤いハートの絵を見て、勘の良いアキラは『あぁ』と小さく頷いたが、あまり良い顔はしていない

むしろ、眉間にしわを寄せており、苦々しい顔をし、吐き捨てるようにしていった

アキラの言いたかった言葉を読み、麗愛も全く同じ表情をする


愛の告白を女性からするという晴れやかな行事の際の乙女の顔などはそこにはなく、場違いな表情で二人は頷き合う


「バレンタインだったか」

「はい・・・・。アキラさんと有馬さん方にも・・・買ったやつですけど会議の合間にでもどうぞ」


購入されたチョコはひと粒ひと粒が個別包装されているものが、箱に詰められているものだった

麗愛はやっと自分の手からそれらがなくなったとひと安心する

見た目的には問題はないのだが、麗愛たちにとっては、味は泥を固形化したようなもの

ナッツなどが混入しているものなどもっての他で、石つぶのような感触を醸し出してくる

アキラにそれを渡すと、すぐさま麗愛はパッと手を離す


「たしかに貰い受けた。バレンタインほど時間と労力の無駄なものはないな・・・女性局員の負担が大きい。その割には、ホワイトデーでは、趣味の悪いハンカチだったりを送られるとは・・・ほら、これがお返しだ」


ぶつくさと文句を言いながらも、アキラが味気のない茶色の手提げ袋を投げ渡してきた

先ほどの自分が渡したチョコとは違い、麗愛は嬉しそうに頬を緩める


「ありがとうございますっ!!主にシラズ君が喜ぶと思います!!今度カレーおごりますね」


シラズの密かな思いを暴露しながらも、一生の家宝にするとばかりに、胸に抱きしめた

なんだかんだでアキラはQs班を気にかけているのか、中には小さな小包が数個入っている


続いて、世間話程度にアキラは口を開く


「それで、麗愛はハイセにやるのか?」

「え、何でですか!?」

「バレンタインとはそういうものだろう?」

「上官だからとかそういうあれですか・・・コネ的な!」


閃いたように麗愛は手を叩けば、アキラはこめかみを押えながら首を振る

麗愛の表情からは冗談なのか本気なのか、読み取れない笑みが貼り付けられている


「ハイセさんにチョコとかあげるなんて、毒と書かれた瓶を渡すようなものですよ」

『そんなことしたら、どんな目に合うか』と麗愛は小さく震えて見せれば、アキラはもういいと片手で制した


「お前がいいならいいが・・・」



アキラは照葉不敵な笑みを浮かべたあと、ブツブツ文句を言いながら去っていく

ラブリーは紙袋と仏頂面をさげて去っていくのを、麗愛は見送る


麗愛は自分の用事はこれで終わったとばかりに、踵を返すのだが―――・・・・・


スリッパの軽い音が迫ってくる


「麗愛ーーーー!!」


激しい足音が聞こえてきて、麗愛は慌てて振り向いた先で見たものは、ラッピングにまみれた什造の姿だった

いつもならバッテンになっているピンが、今日は赤いハート型のピンに変わっており、首にはリボンが巻かれていて、蝶ネクタイになっている

上官とは思えない異様な姿に、麗愛は頬を引きつらせながら、後退るのだが、そのラッピングによって絡め取られてしまいそれは叶わなかった


続いて、正面からの衝撃が続き、危うく倒れそうになった上半身をなんとか前へと戻す

「什造さん!?ダメですよ走っちゃったら」


男性に抱きつかれているというよりも、年の近い弟兄弟にやられているような感覚であり、軽く甘やかしを含めながらも咎める

しかし、什造の耳には入っていないらしく、麗愛から一旦身体を話したかと思えば、くるりと回転してみせた


「麗愛!トリックオアチョコレート!!」

発祥の地は同じかもしれないが

ラッピングの仮装というシュールな姿で、什造はニコニコとした笑みを浮かべ、前に両手が差し伸べられて催促してくる


「間違っていませんか?それ」

「そうです?」

麗愛は仕方ないとばかりに、もう一つ持っていた紙袋を什造に手渡す



動物などの絵が書かれているアルミ紙に包まれたチョコを、上官に渡すのはどうかと最初は思ったが、什造であれば何の問題もないと再認識する


「どうぞ、あとこれ半兵衛さんのです」

「ありがとうです!」


ぺこりと頭を下げながら什造は有頂天に、麗愛が手渡した袋を宙に投げる

あの様子だと、什造は半兵衛にチョコが届けることがないという確信めいた考えをあえて考えないようにした



局員たちはあれぐらい素直にバレンタインのチョコをくれと言えればと羨む局員たちの視線を顧みず、什造はぴょんぴょんと飛び跳ねながら帰っていく

嵐が去った静けさに麗愛は役目も終えたのだからと、次こそシャトーに帰ろうとした


「今日って琲世くん来ますか?」


ショートカットの気弱そうな女性がもじもじと視線をつま先に集めながら尋ねてきた

麗愛がいくら記憶を手繰り寄せてもその顔に覚えはない


麗愛が家を出るときには、ハイセはきっちりとしたスーツではなく、黒いTシャツといったラフな格好をしていたのを思い出す

あの姿はトレーニング時の服装、もしくは部屋着・・・


とにかく質問に答えるべく、口を開く


「ハイセ・・・佐々木一等なら自宅で指導中なので、今日は局には来ないと思いますけど・・・」


それだけ言うと、その女性はしょんぼりとうなだれる

悪いことをしたわけではないが、なぜだかこちらまで申し訳ない気分になり、麗愛も視線を泳がせてしまう

だが、それよりもこの女性の行動やら表情が気になり、なぜか落ち着きなくそわそわとする


「そういうことなのですみません」




「あとごめんなさい。質問なんですけど」


「質問、ですか・・・?」


麗愛は早々に退散してしまおうと、ぺこりと頭をさげたが、そのままの状態で固まる


なぜか早鐘をうつ心臓は、次の女性の一言で止まった



「麗愛さんは・・・琲世くんと付き合っているんですか?」

「え、えっ!?え、違いますよッ!!つ、つつつ、付き合っているなんてそんなことは、滅相もないです、はい!」


予想以上に大きな声を出してしまうが、女性局員は気にすることなく、むしろ笑顔だった


「よかった」


女性からぽつりと漏らされたその表情がひっかかる

『よかった?』と麗愛はぎこちなく首を傾げる



「あの、よかったらこれお願いできますか?」

「何ですか?」


嫌な予感がして、差し出されたのは赤いリボンで縛られた小箱

チョコレート会社の名前などが入れられていないことからも、おそらく手作りであろうそれは、アキラからもらった店で購入したチョコではないということは確かだった


今度は、『ダメですか?お願いします!』と箱を目の前に持ってこられ、隙間から漏れるカカオの匂いに当てられて、麗愛は力なく頷くしかない



その一部始終をみたのか、続いてやってきたのは、広報部の女性、受付嬢、局員数名・・・


我先にと現れた女性局員に埋もれる始末

気づけば、ゴミ袋いっぱいになってしまうほどのチョコレートの山




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