東京喰種 Colos Lie
□8話:透明な檻
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手でこすってしまっていたのか、目の下が乾燥してしまって、そこも赤くなっていて痛々しい
見てはいけないものを見てしまったような気まずい空気と共に、私の心臓がドキッと鳴った
「あ、あの・・・・、わたし・・・」
口篭っていてうまく話せない
舌が鉄でできてしまったかのように、口の中でゴロゴロと重く動かされる
慰めの言葉や、気づかない振りをしてあげるのがよかったのかもしれないけれど、慰めの言葉をかけるには、言葉が思いつかない上に、気づかない振りは今更もう遅い
私が思考に手こずり、ハイセさんの目に気を取られていたせいか、彼の伸びてきた腕に気づかなかった
それは私の腰を掴むと 、腕の中へと引き寄せた
そのままベッドに座っているハイセさんの上に乗り上げてしまい、彼の膝の上に跨るような態勢となる
私は私服に着替えていなかったため、足が開きにくいタイトスカートが太ももまで上がってしまう
幸いなことに、私の胸に顔をうずめるハイセさんにはおそらく見えていないだろうけど、心臓の音は隠しきれない
「ハ、ハハハ、ハイセさん!?」
緊張で、口の中が乾き、上手く声が出せず裏返った
彼のぐすんっと鼻をすする音が返事のようで、ひとまず安心する
僅かに震えるハイセさんの手が私の腰へと巻き付いている
どうしたものかと、おとなしく彼の腕の中にいることにした
やっぱり、さっきウリエ君に言われたことを気にしていたのかな・・・
あのあと、全くみんなと目を合わせてなかったし
妙に元気だったし
あの戦いを見た後だからこそ、『喰種』と言われても平気なのかなって思ったけれども、全然違った
彼も“人間”だ・・・
あんなに凄い戦いを繰り広げていたにも関わらず、今は母親にすがりつく子どものように震えているハイセさんを見て、どこかホッとしてしまう自分がいた
「ハイセさん・・・」
ハイセさんが上官であることも忘れて、私はハイセさんの頭を抱えるようにして抱きしめ、撫でてあげる
ふわふわとした白と黒の混じった髪は、思ったよりも指通りがよくって、するすると抜ける
私の行動に、一瞬だけ彼の肩がこわばり、腕の力が緩められた
かと思えば、さっきよりも一層力が加わる
ハイセさんは私の胸の音を聞くようにして、顔をうずめてきて、私のお腹と彼のお腹がくっついてしまうぐらい密着する
そんな距離に、心臓の音が重なり合ってしまうようで、私の胸がぎゅっと音を立てる
「ハイセさん、一人で背負い込まないでください」
重荷をちょっとだけ外してあげるつもりで、かけた私の言葉はハイセさんを楽にしてあげられたかはわからない
「うっ・・・うぅ・・・・麗愛、ちゃん・・・・ッ」
しかし、次にはせき止めていたものを一気に吐き出すように、ハイセさんは嗚咽から徐々に声をあげて泣く
私は助けてとばかりに伸ばされる手を拒むことなく、腰へと回されている手を握ってあげて、彼自身を包み込む
この手を振りほどけるはずがないのだから