わたしの創作牧場

□乱れ
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「いつまでも愛しているよ」
 あなたはそう私に言ってくれた。私はその言葉を信じ、毎夜あなたが来るのを待つ。
 だけどあなたはある日突然来なくなった。文の一つも届くことはなくなった。あなたが来なくなってから、どれくらいの月日が経ったことでしょう。それでも私はあなたの訪れを待っている。
 昨晩は来なかったけれども今夜は来るかもしれない。そんな淡い期待を持ちながら毎夜、化粧を施し、身なりを整えあなたが訪れるのを待つ。
 それでもあなたはいらっしゃらない。毎晩のように夜が明けて、私は朝日を見る。その度に私の心は、髪は乱れる。
 あなたが愛してくれたこの黒髪。誰よりも美しいと言ってくれたこの黒髪。あなたがこの髪に触れるだけで私の心は満たされ、この上もない幸せを感じた。だから少しでもきれいだと思われたくて、好きだと思われたくて常に気にかけてきた。髪をとかし、油で艶を出して少しでもきれいであろうと努力してきた。あなたが私の髪に触れると、私の心は天女の美しい琴の音を聞いているように心が満たされる。触れたところが厚くなるのを感じ、愛されているという想いが私の中にあるのがわかった。
 でもあなたの訪れがなくなってからは私の髪は乱れるばかり。髪が乱れるたびに私の心は不安になるばかり。あの幸せに身をゆだねていたときの心にはなれない。
 髪が乱れるたび、私の心は不安になるばかり。あなたの想いゆえに乱れてしまう。乱れても、乱れても、私の心が幸せになることはない。あなたが愛してくれた髪は乱れ続け、今ではもう油ではなく、私の流す涙で濡れている。
 ああ、今日も夜が明ける。朝日が窓から差し込んでくる。それでもあの人の訪れはない。一体いつまで私はこの日々を送り続けなければならないのか。
 ああ、今日も心が、髪が乱れる……。

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