わたしの創作牧場

□ぬくもり
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「そういえば昨日、先輩の彼氏を見かけましたよ。なんていうか女の人と一緒でしたけど」
 私を含めた三、四人で作業をしていたら、後輩がそのように言ってきた。だが私は「そう」と一言答えるだけであった。
「いいんですか、先輩。結構楽しげでしたよ」
 私の反応が不満だったのか、後輩が話を続ける。隣にいたもう一人の後輩がそれ以上言うのはまずいよという感じで無言で小突いた。そのやりとりに私は少し笑みを浮かべた。別に気を使うことはないのに。私とあいつのことなど。
「違うのよ。あいつは彼氏じゃなんかじゃないわ。あいつはただの昔馴染みなだけよ」
 私の言葉にその場にいた全員が驚きの表情を浮かべた。
「そうなんですか? 私はてっきり先輩の彼氏かと」
 しかし後輩たちは納得していないようであった。
 だけど、あいつと私は恋人同士なんかではない。もうずっとそんな甘い関係になったことなど、一度だってないのだから。
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