わたしの創作牧場

□ある武官の記録
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 私がこれから記録することは、誰かに見せる目的で書くものではない。
 ただすでに私以外に知る者がいないこの事実を、死を直前にしたこの時になって書こうと思いついたのだ。
 今思い起こすと、私の長い人生の中で様々なことがあったが、あの時ほど私が長年武官として仕えてきたこの国を恨んだことはないだろう。誰かが悪いわけでもない。しかし本当にあの時はあの選択しかなかったのだろうか?
 昨年亡くなった我が王も真実を知ってからはずっとそのことに悩み、悔み続けておられた。その姿をそばで見ることはとても苦痛であった。私があのことを記すことを亡き王はどう思われるだろう。勝手に記そうとした私を恨まれるだろうか?
 それでも私は記さずにはいられない。あの悲しい恋の真実を……
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