Novel

□僕はバカな子のようです
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僕、吉井明久は美少年である。

――あ、痛い痛い! 色んな物を投げな――あぶなぁっ! 咄嗟に畳みでガードしなければ思いきり刺さってたよ!? この大量のカッターの雨は!

「明久、それはそうといきなり自分が不細工である事をカミングアウトしてどうしたんだ?」
 うん、正真正銘不細工である坂本雄二がそんな事を言ってくる。まったく失礼しちゃうようねこの不細工は本当に右腕の関節がキリキリと音を立てながら逆に曲がるううううううううう!!!
「次は左腕だ」
「うん、ごめんなさい……」
「それで、どうしたのじゃいったい」
 見た目美少女、性別秀吉である木下秀吉がそう尋ねてくる。僕は痛む腕をさすりながら「あ、うん」と返事をし、こう答えた。
「実はさ、昨日食費確保の為に泣く泣くゲームを売りに行ったんだ」
「正しい判断だな」
「僕にとっては死活問題なんだけど、まあ良いや。そこでね、変な人に声をかけられたんだ」
「…………変な人?」
 ここで、土屋康太ことムッツリーニが疑問を持ったように首をかしげた。
「うん。どっかのお店のチーフさんらしくて、店で働かないかって。で、何の店ですか――って聞いたらホストクラブみたいなものだって言われてさ!」
 いやぁ、参っちゃうよ。これだから美少年って困るよね。
「ホストクラブぅ?」
 雄二が怪しむようにそう尋ねてくる。僕は頷いて「はい、これもらった名刺」と渡してあげる。
「今日は見学に行ってくるんだ! 姉さんもそういう社会経験は必要だって言ってくれたんだよ! あー、これでお金のない生活からは逃れら――あれ、どうしたの? 皆名刺を眺め見て」
「――どうしたもこうしたも、ないのじゃ!」
 秀吉がプルプルと震えながら顔を真っ赤にして僕の目の前で叫んだ。え、何? どういう事?
「明久、これは受けるのを辞めろ、ああ辞めろ」
「…………これこそ死活問題」
 え、どうしてさ。
「あ、もしかして僕がこの美貌で勧誘された事を根に持っているからなのかなその関節に対する多重攻撃はぁああああああああああっ!!!」
皆が思い思いに僕のありとあらゆる関節を曲げてくれる。もちろん本来曲がらない方向へ。
「――明久、ここに書いてある漢字が読めるか?」
「ふっ、馬鹿にしないでよ雄二。僕にとってはそれくらいイチコロさ!」
「漢字をイチコロしてどうするのかが気になるがのぅ」

 えっと――何何?
 
『男性専門風俗店』

「だんせいせんようかぜぞくせい」
「なんかカードゲームの属性みたいに言いやがったな」
「しかも専用ではなく専門じゃぞ」
 ちょっと分からなかっただけだい。
「…………ちなみに、これは『だんせいよう、ふうぞくてん』と読む」
「ふうぞく?」
 僕は頭を傾けながら、その言葉がどういう意味だったかを思い出そうとするが、思い出せない。
 
 
「…………いろいろ種類はあるが、大抵がエロい事する店」

「「「…………」」」
ムッツリーニの分かりやすい説明に、僕は驚愕を通り越して∵←こんな感じの表情だった。

「――明久」
「これで分かったかのぅ?」
「――イエッサー」

 僕は、どうやらバカな子のようです。
 
「今さらだな(By.雄二)」
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