第参神饌所
□7月14日@三番隊+乱菊
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並んで歩いているとまるで本物の姉弟のようだと微笑ましく囁かれる乱菊とイヅルだが、実際は強引に腕を取られたり肩を組まれたりしているに過ぎない場合が多々ある。それは今日も例外ではなかった。
「良く知らない奴に訊いた方が面白くない?客観的な意見になるし」
「そりゃまぁそうですが。逆に知ったような口叩かれても腹が立つんじゃないですか」
廊下から深い緑を並んで眺め、蝉しぐれに紛れて密談…もとい計画中の二人は、食堂から徒党を組んで戻ってきた三番隊の席官達を呼び止めた。
「ねぇ、君達、一つ訊いてもいいかい?市丸隊長が、その色っぽいというか」
「エロっ!って感じるのってどんな時?」
言い出し難い言葉を継いでくれたのは有り難いのだが、あまりに直接的な表現を用いた乱菊をイヅルが恨めしげに睨んだ。小さく「色気って言えば良いのに…」と呟いたイヅルの脇腹を乱菊が肘で突つく。
いくら馬鹿な質問をしてきても彼等にしてみれば格上の副隊長である。しばし呆然としたものの、一斉に同じ答えを返してきた。
「常にエロいですよ、隊長は」
彼らの言い分では、常に隊舎の中をエロい存在が闊歩して、そういう対象としてギンを見ていることになる。そしてそれは取りも直さず乱菊とイヅルへの挑戦状とも受け取れる発言となる。苛立ちを上手く隠せないイヅルを横目に肩を竦ませた乱菊は、キスする直前が一番エロく見える、と矛先を自分に変えた。
「そうなんですか?ふーん、そうか。キスする時の隊長ってエロいんだ…」
一人納得したように頷くだけで乱菊に対しては欠片も怒りを表さないイヅルに、そういう自分はどうなのだと訊ねる。
「え?そんなの背中に決まってるじゃないですか。あの堂々としたお立ち姿…いつ拝見しても格好良い…」
「そりゃまた随分とマニアックな趣味ね」
呆れる乱菊と慌てふためいて弁解するイヅルは、問い掛けた時から一言も発さない席官の存在に気付いた。他の面子も様子がおかしい同僚を振り返る。
「く、擽られてるんです…誰か、誰か助けて下さいっ」
真っ赤な顔で必死に笑いを堪えている。イヅルに絡んでいた乱菊が背後に回ろうとしたとき、しゃがみ込んで両手を席官の脇腹へ伸ばしているギンを見付けた。
「何やってんのよ、あんた」
立ち上がって袂に手を突っ込んだギンが不貞腐れて後ろを向く。
「ヒトを下ネタの話題にするか、普通」
乱菊とイヅルに両側から挟まれて素直に拗ねるギンの後ろ姿を呆気に取られて見送っていた席官達は、擽られていた一名も含めて、やはりギンは存在そのものがエロい、という結論に落ち付いた。
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最近は乱姐さんが良く遊びにくるようになりましたね。それはそれで仲良しほのぼのなので稲荷的にはオッケーです