いち
□秘められた想い
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この想いは絶対に届くことはない___。
「王子、稽古のお時間でございます。」
「あぁ、すぐ行く。」
わたしはメイド、貴方は一国の王子であるのだから...
王子の付き人を始めてもう2年。
王子の性格も笑顔も好き嫌いも全部知ってる。
だけど想いは伝えられない。
いや、伝えてはいけない。
「名前?どうしたのだ?」
「いえ、何でもありません…」
思わず深刻になる表情を隠そうと微笑む。
「そう、か…」
「申し訳ございません」
「いや、謝る事ではない。
そういえば、余は婚約をする事になった。」
誇らしげに胸を張って言う貴方…
覚悟はしてたから大丈夫_きっと、笑顔で言える。
「おめでとうございます。」
貴方は少しびっくりしたような驚いた表情をした。
「あぁ…ありがとう。」
「おふたりのお幸せを祈っております。」
精一杯微笑む。
「では、わたしはこれで失礼します…」
目にたまった涙を見られぬように、逃げるように部屋をあとにした。
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