手紙。

□第五話
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静まりかえった広間。

「薬でも何でも、飲んでもらうしかないですね。」

「薬・・・。」

千鶴ちゃんが不思議そうに聞く声が、なぜだかスッと通り抜けて行った。

「総司、滅多なこと言うもんじゃねぇ。幹部が新撰組入りしてどうすんだ。」

「しんせんぐみ・・・?」

この後・・平助が口を滑らすんだ・・。

「しんせんぐみはさ・・選の字を手へんにして・・・。」

「「平助」ちゃん!!」

左之さんと私の声が重なった。
途端に平ちゃんは宙に浮いた。

「ってぇ・・。」

「わ、わりぃ。」

これって本当に見ると、痛いものだな・・。

「千鶴ちゃん・・今の話、忘れようよ。」

「え・・・?」

それから、誰も言葉を発しなかった。


――――――――――
――――――
―――
――
暫く立った。
山南さんの腕は、やっぱり完治することはない。

「ねぇ、小葉音ちゃん。」

「なに?」

「山南さん・・前よりちょっときつくなったね・・。」

「うん・・・そうだね。」

仕方がない。
そう千鶴ちゃんに言って、その場所を離れた。

「・・・・。」

きっと今の態度は明らかに酷かった。
仕方ないなんて、よく言えたもんだ。
でも・・仕方ないんだもん。
変えちゃ駄目だ。

「・・やだなぁ。」

この話が残酷になるのって、山南さんが怪我してから。
これから起こることを知ってるって、最悪。
でも、誰にも相談できないんだよね。

「・・・・泣いちゃえ。」

屯所裏で静かに泣いた。


――――――
ある日、総司と千鶴ちゃんが、攘夷派を掴まえて帰ってきた。

「お手柄だね、総司。」

「まぁね。お説教も付いてきたけど。」

「今日は討ち入りか。」

「たぶんね。」

「・・・・・。」

池田屋・・事件。
総司は何が起こっても絶対怪我するから。
それに・・。

「顔色悪いよ。」

「え・・?あ、うん。大丈夫!!!!」

「そう?じゃあ、僕は準備してくるから。」

「うん・・・ね、総司。」

「なに?」

「・・なんでもない!!!!」

二カッと笑ってごまかした。
笑ってごまかせる自分に腹が立った。

――夜。――
「では、君はここで待機してください。」

「はい・・・。」

厳しい視線を向けられる。山南さんの目は鋭く光ってた。

「あの・・・めっちゃ隅っこで居てもいいですか?」

山南さんと広間の真ん中はキツイ。
正直言って、山南さんが苦手だった。

「どうぞ、構いませんから。」

広間の座布団が重なってる隣の隅で、体育座り。
これ、いじめられっ子or根暗にしか見えないよ。

「・・・・・。」

いろいろ嫌になって目を閉じた。
瞬間山崎が飛び込んできた。

「本命は池田屋です!!!!!」

「そうですか・・・。」

「伝令に行ってきます!!!」

千鶴ちゃんはダッシュで伝令に向かった。

「私・・行ったほうがいいですか?」

「いえ。君はここから離れないで下さい。」

相当疑われてる。
私は再び目を閉じた。
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