FFZ

□被験体
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最近身体の調子が思わしくない




でもその理由はわかっていた





今日もいつもの奴が様子を見に来ていつものように俺の側に来て調子はどう?などと聞いてくるので平気だと俺は返す

だが俺の身体の健康管理をするのが奴の役割みたいで、色々触って確かめていつものようにちょっと顔を顰める


「また痩せたな…」


そう言って俺の頬をなでてくれる優しい手

俺は暖かくてその手が大好きだったが、その手に触っていられるのもほんの数分だけ

時間がこれば奴の他に人がやってくる



白い液体の入った注射器を持った男が近づいてくる




男に注射を打たれて、その後は男に身体を触られて…これがいつもの日常

触るなら奴が良いと思いながらも口にする事はない

口答えなんて許されない




男の注射がなんなのか俺には大方予想が出来ている

たぶん病気に強い細胞を作りたいのだろうが、失敗作は逆に細胞を弱体化させていく一方だ



俺はその実験のモルモットだ―



俺の身体は日に日にボロボロになっていくのがありありとわかる

見た目はあまり変わらないが、今は少し転んだだけで大惨事になるほどだし、風邪も引きやすくなった

息を吸うことすら苦しいなんて最近は思うようになってきた



そして今日の実験全てが終わると、奴も男も皆帰っていく

白い部屋にただ一人きりで息を吸う苦しさにたえながら、また明日が来るのを待っていなくてはならない

でも待っているのは今日は別に苦ではない

今日は奴が綺麗な花を残していってくれたのだ…綺麗なピンク色の小さな花

なんでも研究所の庭で咲いていたらしいのだが俺が寂しくないようにと思い、持ってきたらしい

綺麗なアネモネの花―



『知ってるか?アネモネの花言葉って、希望らしいんだ…まぁ他にもいっぱいあるけど、今のアンタにはこの花言葉が一番良いと思って』



なんてはにかみながら言って置いていってくれた

他の部屋から隔離されたこの部屋は花を育てるのにはちょっと不都合すぎる

この部屋に居たらこの花に水をやる事も日光を当ててやる事も出来ない

だが奴が毎日来て水をやっている





だから良かったんだ




数日後、今日はアネモネの花がしおれてしまっていたのでどうしようか悩んでいると男が俺のところに来た

何でも彼は奴は来ないらしい

アネモネの花も枯れてしまうのだろうか・・・

今日も実験は続けるらしく、男は注射器を俺に向けたがいつもと違って、今日は透明な液体だった




男が俺にそれを注射したとき、ドアが勢いよく開いて、そこには奴が立っていて驚いた目をしていた



「ヴィンセント!!」



そう俺の名前を叫んで走ってきたと思ったら、男を殴り倒して俺のところに走ってきた

奴が俺の手をとった瞬間、俺の身体は耐え難い程の激痛に襲われた

身体が痛く、息も出来ず、苦しい




気がついたら俺は血を吐き出していた



「く…っ…息……が…」



俺は胸を押さえて奴を見た

奴はとても悲しそうな顔をして俺を見ていて男は殴られたところを拭いながら笑っていた

俺は男の顔を見て悟った



自分はもう用済みなんだ




ということを―




もう身体が弱りすぎて薬の効果が分からなくなったのだろう…さっきの注射は毒かなにかだったのだろうな

奴はきっと俺が殺されるのを知っていたのだろう…だから止めようとしてくれた

きっと一番傍に居たから俺に情でも移ったのだろうが研究員と披見体が馴れ合いっこなんて、そうでなければおかしな話だ

でも俺の世話をしてくれたのが奴で良かった




優しくて、綺麗で、本当はとても脆くて―毎日の注射が苦痛に感じなかった

たまに、夜にこっそりと食べ物を持って遊びに来た事もあったな



その奴が、今俺のせいで悲しんでいる

俺の身体を起こして、しっかりと手を握ってくれている


「そ…んな…顔…するな…俺…は…もう平気…だから」




そう、もう身体は全然痛くなどなかった

感覚が麻痺しているのだろう

俺が言った後の奴はさらに悲しそうな顔になってしまった



「な…くな……そうだ…名前……」



そう俺はまだ奴の名前を知らなかった

奴は他の奴等がつけている名札をつけていなかったから

奴はそういった俺に顔を近づけて教えてくれた





"クラウド"という名前だと―




悲しむな

俺とクラウドは元々馴れ合いなどしてはいけない関係だったのだ

これからは、上でお前の事を見守ってるよ




だからそんな顔をしないでくれ









俺が最初で最後に愛した人よ―

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