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□ヤキモチをやく
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手を繋いでみるの続きだったり


「はあ……」
自然と溜息が口をついて出る。
昨日の帰り道はとにかく心臓に悪い。て、手を繋ぐなんて恋愛経験皆無の私には、少しハードなのである。その分、鏡音君はきっと馴れているのだろう。だって、とても自然だったから。

あのあと、朝も一緒に行こうと言ってきた鏡音君をやんわりと断った(帰りは一緒だと決められたけど)。

なので今は一人である。でも少し寂しいというか、物足りないというか。もしかしたら、もしかしなくても、私にとって鏡音君は、特別な存在になってきているというこづろうか?

まだ学校に着くには早い時間。私はずっとこの心境の変化について考えていたから、後ろから近づく人物には、全くと言っていいほど気付かなかった。


「リーンっ」
「ぴゃああああああ!?」

いきなり肩に手をぽんっと置かれ、私は心臓が飛び出るくらいに驚いた。

「くっ、クオちゃん!」

「おはよう、リン。今のはかなり近所迷惑だと思うけどな」

そう言ってクオちゃんは私の隣に並ぶ。
クオちゃんこと、本名初音ミクオくんは私の従兄弟で、ミクちゃんっていう双子の姉がいる。二人とも同じ学校で、昔から仲が良い。姉弟のいない私にとっては家族のような感じ。
いつもミクちゃんと二人一緒に登校しているのに、今日は一人だ。

「あれ?ミクちゃんはどうしたの?」
「ああ、ミク?アイツ夜中にずっとゲームとかしてたから、今はまだ寝てるよ。たぶん遅刻ギリギリだな」

「起こしてあげればいいのに。ミクちゃん怒らない?」

「そうなんだけどさ、起こしたら起こしたでキレるんだよなぁ……。どうしろっての…」

大変だねぇ。なんて言いながら他愛もない話に花を咲かせる。話題はミクちゃんのことだったり、先生のおもしろい話だったりと様々。
クオちゃんもミクちゃんも部活で忙しいし、クラスもバラバラだから朝くらいしか話せない。だから久しぶりに話せて、私はとても浮かれていた。

そしたら、聞き覚えのある声に「リン」と、名前を呼ばれた気がした。後ろを振り返ってみると、綺麗な蜂蜜色の流れるような髪が目の端に映った。

「クオ、なんでお前がリンと一緒にいるんだよ」

「知りたい?」

それにしても、鏡音君、なんか恐い。怒ってるのかな?でもどうして?
クオちゃんが私の肩を少し引いたので、少し慌ててしまった。
そしたら鏡音君の表情が更に曇った。

「その手を離せ。リンが汚れるから」

「やぁーだ、って言ったら?」

「ちょ、鏡音君!クオちゃんも、喧嘩はダメだよ」

正に一触即発。といった感じの二人に焦って間に入ったけど、これがいけなかった。

「……クオ、ちゃん?」

私の言った言葉を繰り返す鏡音君は、とてもショックな顔をしていた。近くにいたクオちゃんが、やれやれというように首を振りながら、鏡音君の方へと近づく。


「リンとは従兄弟だよ。嫉妬深い男は嫌われるぜ?」

「なっ!」


嫉妬?

またどうしてそんな単語が?
クオちゃんはそのまま元来た道を歩いていった。聞くと、ミクちゃんを起こしに行くのだとか。



私と鏡音君は、静かな道路にぽつんと残されてしまった。



「リン」

いきなり名前を呼ばれ、びくっと体が反応する。


「な、何?」

「ミクオとは本当に従兄弟なのか?」

「う、うん。昔からよく遊んでたから…」

鏡音君は、そっかと言って外方を向いてしまった。
私はふと、さっき聞いた嫉妬について気になった。


「鏡音君、嫉妬ってどういうことなの?」

「っ!?」


バッと勢いよく此方に向けた顔は頬がほんのりと赤く染まっていて。
「リンは、ずるい」

そう言って私を逃さないように、塀に両手を突く。

「なに、が?」

「名前」

私がキョトンとしていると、鏡音君は頭を掻きながら、拗ねた子供のように言った。


「俺は名字なのに、ミクオばっかり名前でなんて、不公平だ」

「……なんだぁ」

「なんだってなんだよ」

「だって」

だって、鏡音君は私に怒っていると思ったんだもん。
返事の代わりに少し微笑んだら、鏡音君はまたむっすりとした顔になり、さっきより顔を近付けて、言った。


「じゃ、今日から名前で呼んで?」
「えっ!?でも、あのあのあの…鏡音君ちょっとそれは…」

「名前。レンって言わないとキスするから」

「えぇぇぇぇ!?」

「ほら、早く」

「う、」

段々近づくその綺麗な顔に、緊張でドキドキと脈打つ心臓のせいで、うまく喋れない。

「れっ、レン君!」

私たちの距離は、もう隙間が無いくらい近かった。恥ずかしさのあまり、顔を直視されたくないのにどうしても見えてしまう。

「恋人同士なんだから、堅いのはなし、ね?」

「……うん」


鏡音…レン君もどうやら怒っていないらしいし、よかった。


「そういえばかっ……レン君。クオちゃんと知り合いなの?」

さっきから、なんとなく気になってたから聞いてみたけど、レン君はまたすごく嫌そうな顔をした。
「まあ、腐れ縁だよ」

そう言って歩きだしたレン君に追い付くように、少しだけ早く歩いた。


たぶん、これからもレン君。と言うことに恥ずかしがったりするかもしれないけど、名前で呼びあうのはやっぱり恋人っぽくて、なんだかこそばゆい。


自然と笑みが出てくる。



ああ、私はレン君が大好きです。












***

ミクオ登場☆
背後からの登場って軽く変態っぽい……

途中砂糖吐くかと思いました(笑)

ていうかこれシリーズじゃねと思い始めた今日この頃です←

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