short

□知りたいと思うのは
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「レーンきゅん!」

ああ、今日もまたうざい奴がきた。
物凄い早さで抱きついて来ようとするアイツに、俺は既に馴れてしまった回避行動をとる。
そのままの勢いで奴は地面へとダイブし、変な悲鳴を上げながらゴロゴロと転がっていく。

俺はふぅっと溜め息を吐き、また歩きだそうとした。その時、何かが背中に突撃してきた。

「もう、レンきゅんったらツンデレンなんだからぁ!」
「なっ!!お前さっき転がっていったろ!?」
「愛の力の前では、不可能も可能になるのです!」
「……そうか」


とりあえず、コイツがすごいことがよくわかった。並の人間ではない。




俺にストーカー行為を平気で行ってくるこの女は、鏡音リンといって、同じクラスで名簿が前後である。なんと同じ名字であり、そのことが現時点に至ることの発端らしい。

以前、何故付き纏うのかを問いただしたら、少し照れた風に語りだした。


「私ね、新学期ですっごくドキドキしてたの!だって、クラス替えの紙を見たら、私の後ろの人が同じ名字だったんだもん!だからね、どんな人なんだろう?かっこいいのかな?同じ名字だなんて運命感じちゃうなぁ、なんて思っていたの。そしてクラスに行って、私の席に間違えて座ってたレンきゅんを見て、どことなく私と似てるなぁ。とか思って。私が、ここ私の席なんですって言った時の慌て方なんてすごく可愛かったですはあはあ。そしてレンきゅんが後ろの席に座って、あれ?じゃあこの人が鏡音レン君なのかぁ?って思って聞いてみたらそうで。なんか本当に運命感じちゃったわけなのです!」



これを言われて俺は何も言えなかった。ああ、確かにそんなことあったっけな。なんて思っていた。

最初の頃は、ちょっと大人しめの可愛い子だと思っていたのに。
コイツは最初から変態だったのか、と逆に納得できた。


運命って……少女漫画じゃあるまいし。全く、まあそういうところもかわ……。

いやいやいや!可愛いとか思ってねぇよ!
むしろうぜぇよ!

「あ、レンきゅん!今日はね、レンきゅんの好きなバナナロール作ってきたの!」


はい、と言って笑顔で差し出してくる。何故、コイツは俺の大好物を知っているのだ?

そういえば。

コイツは俺のことをいろいろ知っているのに、俺はコイツのこと、全然知らない。

好きなものも、嫌いなものも。


そう思ったら、何故だか嫌な気分になった。

アイツは今でも、レンきゅん可愛いねとか、むっすりした顔もたまりませんなんて言って……。

「おい」
「なあに?レンきゅん!」
「……今度は俺のことだけじゃなくて、お前のこともたくさん話せよな、リン」


ぼんっという音が、本当に聞こえてきそうなほど急激に赤くなっていく奴を見たら、なんだか、俺まで赤くなってしまった。










(コイツ、こんなに可愛かったっけ!?)












***
初めてのキモリン
見事に撃沈です。ええ。

レンはなんだかんだ言いながら、キモリンのことが好きでいればいいと思う。

キモリンもっと頑張ります



久しぶりに書いたのがこれってどうなんでしょうか……orz

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