ぶん。

□キリリク
1ページ/1ページ



「今度リンに歌ってもらうのは恋の曲な」

そう言ってマスターから渡された楽譜を、リンは嬉しそうに眺めた。

いつもはレンと一緒の歌がかなり多いから、一人で歌うのは何だか新鮮で。とても楽しみだった。


けど。


「……また失敗…」

今しがた、マスターにもっと歌の意味を考えてこいと言われたばかり。

家の自室で一人ベットの上で体育座りをしている。いったい、何がいけないのだろうか?もっと心を込めて歌う?

考えても考えても何がいけないのかわからない。

「リン、帰ってる?」
「……レン」
いきなり現われたレンにびっくりする、と同時にレンという存在に安心する。

「どうしたんだ?マスターに怒られたか?」

心配そうに見るレンに、リンはダムが決壊したかのように大粒の涙を流した。

「…あの…ね、……せっかく…マスターがリンにくれた曲なのに、…うまく歌えないの」

涙みたいにポロポロと零れる言葉は、嗚咽に混じってひどく聞きずらい。けれど、レンは真剣にリンの話を聞いていた。


「じゃあ、一緒に歌ってみよう」
「……え?」

そう言ってレンは、部屋に散らばった楽譜を集める。

「ほら」
「……う、うん」












「リン、歌えるか?」

「……はい!」


あのあと、レンとリン、二人で歌った。キレイだなんて言えるものではないけれど、楽しくて。
きっと楽しむということを忘れていたのだ。


歌っているとき、リンは昨日のことを考えていた。レンのことを。



「いいね。よくなったじゃないか、リン」
「ありがとうございます!マスター!早速レンに伝えなきゃ」

「レン?」
「はいっ、レンのおかげなんです!」

「へぇ、レンがねぇ……。そうだ、これレンに渡しといてくれ」

「なんですか?」

「渡せばわかるさ。お疲れさま」











「レンのおかげ!!ありがとう!」
そう言ってリンはレンに抱きついた。持っていた楽譜は全てレンの部屋に舞う。

「本番もレンのこと考えてたらうまくいった。全部レンのおかげ!!」
「わかったから、ちょっとリン苦しい」

あ、そっかごめんと言って離れるリンから解放されたレンは、床に散らばる楽譜を見て言った。

「これは?」

「あっ、マスターから預かったの。これ、レンが歌うの?」

リンは一つ拾い上げてレンに問い掛けた。


「違うよ」
「えっ?」

「リンと僕の歌。マスターに前々からお願いしていたんだ」

レンはまるで、悪戯が成功したかのような悪っぽい笑顔でリンを見た。

「僕と一緒に歌ってくださりますか?」

「もっちろん!リン、レンと歌うほうが好き」


一人よりも、二人で歌えば、君をもっと近くに感じられるから。










***

鈴南様
こんなもんになってしまいました……!
絵はかけたら描きたいかと


7000hitありがとうございました

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ