ぶん。
□キリリク
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「今度リンに歌ってもらうのは恋の曲な」
そう言ってマスターから渡された楽譜を、リンは嬉しそうに眺めた。
いつもはレンと一緒の歌がかなり多いから、一人で歌うのは何だか新鮮で。とても楽しみだった。
けど。
「……また失敗…」
今しがた、マスターにもっと歌の意味を考えてこいと言われたばかり。
家の自室で一人ベットの上で体育座りをしている。いったい、何がいけないのだろうか?もっと心を込めて歌う?
考えても考えても何がいけないのかわからない。
「リン、帰ってる?」
「……レン」
いきなり現われたレンにびっくりする、と同時にレンという存在に安心する。
「どうしたんだ?マスターに怒られたか?」
心配そうに見るレンに、リンはダムが決壊したかのように大粒の涙を流した。
「…あの…ね、……せっかく…マスターがリンにくれた曲なのに、…うまく歌えないの」
涙みたいにポロポロと零れる言葉は、嗚咽に混じってひどく聞きずらい。けれど、レンは真剣にリンの話を聞いていた。
「じゃあ、一緒に歌ってみよう」
「……え?」
そう言ってレンは、部屋に散らばった楽譜を集める。
「ほら」
「……う、うん」
「リン、歌えるか?」
「……はい!」
あのあと、レンとリン、二人で歌った。キレイだなんて言えるものではないけれど、楽しくて。
きっと楽しむということを忘れていたのだ。
歌っているとき、リンは昨日のことを考えていた。レンのことを。
「いいね。よくなったじゃないか、リン」
「ありがとうございます!マスター!早速レンに伝えなきゃ」
「レン?」
「はいっ、レンのおかげなんです!」
「へぇ、レンがねぇ……。そうだ、これレンに渡しといてくれ」
「なんですか?」
「渡せばわかるさ。お疲れさま」
「レンのおかげ!!ありがとう!」
そう言ってリンはレンに抱きついた。持っていた楽譜は全てレンの部屋に舞う。
「本番もレンのこと考えてたらうまくいった。全部レンのおかげ!!」
「わかったから、ちょっとリン苦しい」
あ、そっかごめんと言って離れるリンから解放されたレンは、床に散らばる楽譜を見て言った。
「これは?」
「あっ、マスターから預かったの。これ、レンが歌うの?」
リンは一つ拾い上げてレンに問い掛けた。
「違うよ」
「えっ?」
「リンと僕の歌。マスターに前々からお願いしていたんだ」
レンはまるで、悪戯が成功したかのような悪っぽい笑顔でリンを見た。
「僕と一緒に歌ってくださりますか?」
「もっちろん!リン、レンと歌うほうが好き」
一人よりも、二人で歌えば、君をもっと近くに感じられるから。
***
鈴南様
こんなもんになってしまいました……!
絵はかけたら描きたいかと
7000hitありがとうございました