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□もう寂しくない
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そこに君はいた。
そこで君が何をしていたかなんてことは、聞くつもりはない。
それでも君はそこにいた。
いつも通りの帰りみち。
ただいつもと違うのはなんというか、この孤独感。
進路について妙に真剣に考えてしまったための不安感。
そんな時に君に出逢った。
君は何をするわけでもなくただ、こちらを見ていた。
「こんにちは」
声をかけても知らんぷり。
首をかしげるくらいしてくれてもいいのに。
そっちから見てきたのにさ、と少しやさぐれた気持ちになる。
何を考えているかなんてわからないから仕方なくその場を去ろうとする。
そんな時に君から声をかけられたんだ。
「みゃ〜」
呼びとめてるような、甘えているようなそんな声。
三色の色をまとった君はやっぱりこちらを見つめていたね。
三毛猫はみんなメスだったかな、とどこかで聞いた情報を思い出しながら、再び君と見つめあった。
あまりに目を離さないものだから、今度は逆に近づいてみる。
予想外に君は離れていかなくて。
頭に手をのせてみると気持ちよさそうに目を細めた。
「慰めてくれてたのかな?」
猫に自分の気持ちがわかるはずないと思いながらも、頭を撫でながら語りかける。
君は何を考えているのかさっぱりわからないことだらけ。
でもこんな風に出逢ったのも何かの縁。
こころがふっとあたたかくなった。
不安がなくなったわけじゃない。
でもなんだか、モヤモヤ感が少し薄れた感じがした。
タイトル:(c)ひよこ屋
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