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□僕に優しい色を
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久々に地元に帰った。

あまりにも突然のことだったので、相手にしてくれる友人もいず。

どうせならもっと計画的にすれば良かったなんて思いながらも、、、

後悔なんてしても仕方ないことは自分が一番わかっていることだから。

ただ気が向いた方向に、それが自分にとって一番自然な流れ。

誰に縛られることもなくて。

それでもあまりに何もしないのも、もったいないような気がして、散歩にでかけた。

目的地はない。

そもそも暇つぶし程度に始まっただけだから。

ふと思い立って、地元の小学校にでも行ってみようかと思いたつ。

お世話になって恩師はもうすでにこの学校にはいないのはわかっている。

それでも昔を懐かしむというか、そんな風に感傷的な気分になりながら。

もうこんなに成長してしまった自分は、あの校門を通り抜けることはできない。

ちょっと寂しさを感じながら、当然といえば当然のことなのでそんな気持ちもすぐに胸の中に隠れた。

ふと見れば今も変わらずにある文房具屋。

いつもここでノートとか買っていたっけ。

思い出に浸りながら、そうだ、ここはまだ入ることができるぞ、と気がつく。

店の中の雰囲気はあんまり覚えていないけど、きっと昔からこんなものだったんだろう。

こんな小さなお店に入ってしまったのだから何も買わないで出てくるのはあまりに不自然かもしれない。

何気なく手に取ったのは、よくあるクレヨン。

たいした理由はないけれど、一番昔を象徴しているように思えた。

青春の一ページを描こうなんてくさいことはしないけれど、

でもまぁ今の気分なら、それくらいできるかもしれない。

それならどの色を使おうか。

どうせ使うなら単純だったあの頃のように、簡単な色にしよう。

素直じゃなくて、でも真っ直ぐだった自分には、そうだな。

どうせなら正反対に優しい色を使ってやろうか。

ちょっと位、僕自身を優しくしてやるのも悪くないだろう、なんてそんなことを思いながら

久々にウキウキとしてレジに向かった。








タイトル:(c)ひよこ屋

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