御伽草子

□春のウタ
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桜が舞い降りて 地面に細雪をまき散らす

「もう・・・こんな季節・・」

貴方がそっと囁いて 甘い甘い溜め息
もう少し側にいたくて ちょっとだけ背伸びをする
桜は春・・ 沈黙の甘い季節

誰も知らない 二人だけの抜け道で
小さな小さな 口づけをしよう
見ているのは 桜だけ 凛と立っている 桜だけ

雨が降れば それはそれは甘く薫る
あの時の口づけのように 濡れながら熔けていく

「明日も、ずっと・・・二人でいたい・・・」

囁く声は 桜吹雪に掻き消され
それでも 貴方は

「大好きだよ・・・」

そう呟いて 背中を向ける

追いかけて また 見つめ合う 
それだけで

『幸せだよ』
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